第47回 「子どもマーケティング」と「親マーケティング」の違い

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第47回 「子どもマーケティング」と「親マーケティング」の違い

安田

前回は、万代さんが大きくターゲットを変えたというお話をお聞きしましたが、ターゲットを変えるのってすごく難しいですよね。ここで間違えてしまう経営者さんも多いと思うんです。


倉橋

そうですね。万代でも、お子さんに来てもらえる店を作ろうと「子どもマーケティング」の研究を続けていますが、すごく難しいです。「子どもが行きたい店」と「親が子どもを連れて行きたい店」がそもそも違っていたりして。

安田

ああ、確かに。子どもはガチャガチャがたくさんあるところに行きたがるけど、親は図書館に行かせたい、とか(笑)。「子どもさえ掴めれば親も付いてくる」というほど単純ではないわけですね。


倉橋
そうなんです。子どもをターゲットにするなら、「中毒か」というくらい本当にハマってもらえる店を作らないといけないと思うんです。でも、連れてくるのは親だからと、つい「親が子どもを行かせたい店」を考えてしまいがちなんですよ。
安田

ふーむ、「親も喜ぶような店」ではダメなんですか?


倉橋
ええ。それでは子どもは楽しくないですからね。「親が行かせたい店」に、子どもが自分から行きたがることはないと考えていいと思います。
安田
なるほどなぁ。ということは、「ファミリー」で一括りにするんじゃなくて、子どもは子ども、親は親とそれぞれターゲット設定をするわけですか?

倉橋

それでいうと、一旦親のことは忘れてOKです。その代わり、徹底的に子どもにターゲットを絞る。子どもが行きたがらなければ、結局ファミリーも動かないので。

安田

ははぁ。いくらお母さんやお父さんが行きたがっても、子どもが気乗りしなければファミリーは来ないと。


倉橋

そういうことです。例えば回転ずしやスーパー銭湯などを見ていると、お子さんが喜ぶしかけがたくさんありますよね。

安田
ああ、確かに。子どもが熱烈に行きたがれば、親は行かざるを得ない、と。でも、万代さんのお店にはお母さん向けの美容グッズやお父さん向けの趣味の品も置かれてるじゃないですか。そのあたりは、あくまでも付属ということですか?

倉橋

ええ、仰るとおりです。「お子さんを連れてきた方たちのためのサービス」として置いています。

安田

へぇ〜、なるほどなぁ。「子どもに付いてきた人たちも退屈しないように」ってことなんですね。


倉橋
そうそう。家族で楽しんでもらうための仕掛けというか。つまり、入口は子どもへの訴求に振り切って、来店いただいた後は親も楽しめる、という形なんです。回転ずしもスーパー銭湯も、最終的には家族全員が楽しんでますよね。
安田
言われてみるとそうですね。なるほど奥が深い。とはいえ、最近は円安だ物価高だと不景気な話も多いでしょう? 家族皆でお出かけするハードルが少し上がっている気もするんですが。

倉橋
仰るとおりです。レジャーにかかるコストもどんどん上がっていて、ゴールデンウィークに北海道から3泊4日でディズニーランドに行こうとすると、50万円くらいかかったりする。
安田

50万ですか! それはちょっと高いですね。


倉橋
そうなんです。でも逆に言えば、そこが僕らのビジネスチャンスでもある。「万代ならずっと安い金額で家族全員が楽しめる」というイメージを持ってもらいたくて。
安田

ははぁ、なるほど。お金を気にせず家族皆で楽しめる場所ですよと。……とはいえ、ターゲットはあくまで「子ども」にするんですよね。

倉橋
そうです。あくまでも「子どもマーケティング」であって、「親マーケティング」にしない。そこがコツですね。
安田

ふーむ、多くの人が間違いやすいところですよね。ターゲットを広げすぎてしまうこともあるでしょうし。

倉橋
商売では商品にしろターゲットにしろ、ぼやけないようにすることが重要ですからね。それが一番難しい部分でもあるわけですけど。
安田

ぼやけてしまうことで、結局誰にも響かなくなっちゃいますもんね。例えば子どもが喜ぶからとガチャガチャを置いたのに、その景品を親に寄せて勉強グッズにしてしまったら、子どもにも親にも響かなくなってしまう(笑)。

倉橋
ええ、まさに(笑)。「親マーケティング」になってしまうと、子どもがしぶしぶ行くようになるんです。親は図書館に子どもを連れていきたいんですけど、子どもは静かにしなければいけないから行きたくない。
安田

なるほどなぁ。ちなみにターゲットを設定するときに、間違っていないかどうか確かめる方法ってあるんでしょうか?

倉橋
そのターゲットが喜んで行っている場所を見に行くのが一番です。そうすれば、「図書館はファミリーで行く場所ではない」ということがわかると思います。

対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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