第60回 「日本で一番すごい社長」になる唯一の方法

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第60回 「日本で一番すごい社長」になる唯一の方法

安田

日本で一番すごい社長って、「社員の給料が日本で一番高い会社の社長」だと昔から思ってるんです。倉橋さんも近い考え方なんじゃないかなと思うんですがいかがでしょう?


倉橋

ええ、同感です。「部下の給料を上げた人=優秀な上司」だと思ってますから。つまり、社長としての能力の高さは、社員の給料をどこまで上げられたかで決まると言える。

安田

うんうん、わかります。とはいえ、そういう風に考える人ってすごく少ないですよね。経営者からすると、人件費もコストの一部ではあるわけで、抑えられるなら抑えたいと。


倉橋

気持ちはわかるんですけどね。人件費を抑えた方が会社の利益はたくさん残ることになるので。

安田

そうですよね。実際、もしまったく同じ能力の人が2人いたら、当然安い方を雇うと思いますし。いかに安い金利でお金を借りるかというような、仕入れ的な発想に近くなってしまうんでしょうね。


倉橋

そうかもしれません。ただ、その発想だと採用力が上がっていかないんですよね。うちはできるだけ高めの給与で求人を出しているので、採用はかなり有利に進められています。

安田

なるほど。確かにこれから入ってくる人に対してはいいアピールになりますもんね。そこに関しては多くの経営者も理解は示すと思いますよ。ただ、「入社後もその金額をずっと払い続けるのか…」と考えるとなかなか決断できない。


倉橋

うーん、まぁ、そういう意味では僕は観点が違うんですよね。店舗ビジネスは「チーム戦」なので、そもそもいいチームを作らないと成功しない。そしていいチームを作るには、メンバーたちのモチベーションを高めることが不可欠なんです。つまり、納得してもらえる給与を払うというのは、ビジネス成功の必要条件なんですよ。

安田

ははぁ、なるほど。すごく腑に落ちる話です。倉橋さんにとっては、高い給与を払っていた方がビジネスの成功がより大きくなるとお考えなんですね。


倉橋

そういうことです。この商売を始めて20年経ちますが、実際その通りになっていると感じますから。だからこそ、冒頭の話のように「給料を上げる」ことこそが上司の一番の役割だと思うわけで。

安田

いいですね〜。私もそう信じてやってきたので、よくわかります。ただね、かといって上げすぎてもうまくいかない、って部分がありませんか?


倉橋

ああ、確かに。会社の利益以上に分配してしまったら、組織として成り立ちませんしね。そのあたりのバランス感はすごく大事でしょうね。ただ矛盾するようですが、「利益が出てから給与を上げよう」だとなかなか変わらないとも思うんです。まずは「よし、皆の給与を上げよう」と決めて、具体的な方法を考えていかないと。

安田

ああ、確かにそうですね。そうしないと、「うちは儲かってないからこれ以上の給料は払いようがない」という理屈になってしまうので。それでは前に進まない。


倉橋

ええ。それに、そもそも社員の給与って社歴に応じて基本的には上がっていくものじゃないですか。つまり「より多くの給与を支払うにはどうするか」というのは、すべての会社が考えるべき命題なんですよ。

安田

確かに確かに。長くデフレが続いていたことで見えにくくなっていただけで、社員の給与は年々上がっていくのが普通ですもんね。


倉橋

日本が30年くらい経済の発展がなかったのも、給料が上がらなかったことが一因ではあると思うんです。給料が上がれば自然と生活水準も上がりますから。東南アジアの高度経済成長期にある国に行くと、給料が上がってどんどん生活が豊かになっているのがよくわかります。

安田

昔の日本もそうでしたよね。でも今は経営者の脳が「いかに人件費を抑えて利益を出すか」という考え方で固まっている気がします。最低賃金が上がると聞けば、「そんなことをしたら潰れるじゃないか!」と口々に言ったりして。

倉橋

そういう考え方を切り替えていくしかないんでしょうね。その上で、粗利を上げるための行動を一つ一つ実行していく。社長が「給料は上げない」ということを発信した時点で、会社の成長は止まってしまうので。

安田

上げるところは大々的に言うわけで、そんな中で黙っていたら「上げない」と言っているようなものですよね。結局、「うちは上げます!」と言わざるを得ない。なかなかプレッシャーのかかる時代ですよ。

倉橋

僕にとっては楽しいですけどね。単純に、給料を増やせば皆喜んでくれますし。

安田

なるほどなぁ。そこを切り替えないことには、これからの経営は成り立っていかないんでしょうね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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