第80回 子どもを夢中にする「10円キャッチャー」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第80回 子どもを夢中にする「10円キャッチャー」

安田

前回は、台湾式のクレーンゲームをはじめ、「高揚感」を大事にしているというお話でしたね。他にもお客さんの気持ちを高めるような仕掛けはありますか?


倉橋

特に力を入れているのは、子どもたちが「ワー!」と集まるような仕掛けです。その一つが「10円キャッチャー」という、10円玉で遊べるクレーンゲームですね。

安田

なるほど。大人だと1回100円でも割と気軽に遊べますけど、小さな子どもにとっては100円はなかなかの大金ですもんね。


倉橋

そうなんです。100円玉だと、何度か遊んだら「今日はここまでにして、また来週遊ぼう」となってしまう。でも10円キャッチャーなら、毎日でもちょこちょこと遊んでもらえるんですよ。

安田

ははぁ、なるほど。景品も普通の1回100円のクレーンゲームとは変えてるんですか?


倉橋

そうですね。小学校低学年のお子さんがメインのターゲットなので、そのくらいの年代の子に喜んでもらえるものを入れてます。トレーディングカードや、お子さん用のコスメとか。

安田

へぇ。それが1回10円で遊べるわけですね。でも子どもって、あまり深く考えずにボタンを押してしまったりするじゃないですか。「ここからはどう頑張っても取りようがないぞ」というところでクレーンを止めたり(笑)。


倉橋

それはありますね(笑)。まぁでも10円玉が10枚あれば、100円以上の景品が手に入るようには設定しているので、十分楽しんでもらえると思いますよ。

安田

なるほどなるほど。でも逆に言えばそれって万代さんからしたら赤字ってことじゃないですか。100円以上の景品が最初の10円で取れちゃうこともあるんでしょうし。


倉橋

ええ、完全に赤字です(笑)。最近はうまい棒1本15円の時代ですからね。ただ、お子さんに高揚感を感じてもらえれば、またお店に来てもらえますからね。そのための投資というか。

安田

なるほどなぁ。でもお子さん相手なんだから、10円以下の景品を入れておいてもよさそうなものじゃないですか。「景品を獲得できた」という体験が重要なんであって、中身がなんでも喜んでくれるような気がしますけど。


倉橋

いや〜、そんなことないです。お子さんはお子さんなりにちゃんと欲しいものを選びますから。むしろそのあたりの感覚は大人よりシビアかもしれない。

安田

ああ、なるほどなるほど(笑)。子どもって正直だから、いらないものは本当にやらないんでしょうね。


倉橋

そうそう。お子さんに「タダであげる」と言って「いらない」と言われそうなものは、最初から置かないのが鉄則です(笑)。

安田

なるほどなぁ。ということは、「欲しい景品があるからやりたい」だけで、景品を獲得するという行為自体はあまり関係ないんですかね。

倉橋

いえいえ、そこも非常に重要です。「欲しいもの」であるだけでなく、それを「自分で取る」というところに興奮が生まれるので。そういう意味では、ちょっと虫捕りに似てるかもしれません。

安田

ああ、わかりやすいです。虫って1匹捕まえるとどんどん捕まえたくなりますもんね。ある種の中毒性があるというか。でもトレーディングカードはともかく、コスメなんて1個取ったらもういいかな…となる気もしますが。

倉橋

大人の女性だって、使わない色までたくさんコスメを持ってますよね(笑)。子どもでも同じですよ。「集める楽しみ」って年齢関係なくあるもので。

安田

確かに確かに。ちなみに景品はどうやって決めているんですか?

倉橋

子どものいる社員やスタッフにヒアリングしたり、親御さんの声を集めたりしてます。親がどう感じるかも含めて、マーケティング担当が分析しているんです。

安田

なるほど。親がどう考えるかも大事ですもんね。そういう意味で「10円キャッチャー」という切り口はすごくいいですね。それくらいの金額なら、親も安心だろうし。

倉橋

仰るとおりなんです。親が「もうやめなさい!」となるケースは大抵、予算をオーバーした時で。お子さんがお小遣いの範囲内で遊んでいる分には反対されることはありませんから。

安田

でもいくら予算内でも、あんまり何回も遊びたいって言われたら、付き合う親も疲れちゃいません?

倉橋

そうならないために、親御さんに喜んでもらうためのコンテンツもしっかり作り込む必要があるんです。結局、お店に行くには親御さんの協力が不可欠なわけで。

安田

そうかそうか。子どもマーケティングだけじゃなく、親マーケティングも必要なんですね。

倉橋

仰るとおりです。例えば4人家族で、誰か1人でも「行きたくない」と思ってしまったら、月に4回来てくれていたのが、2~3回に減ってしまうかもしれない。それは避けたいですからね。

安田

確かにそうですね。「子どもが行きたがる」「お父さんお母さんもついでに楽しめる」となると、家族全員がリピーターになりやすいですよね。

倉橋

そうやって何度も来てもらい、家族ごと万代のファンになってもらう。それが理想です。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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