第96回 松下幸之助が成功した理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第96回 松下幸之助が成功した理由

安田

松下幸之助さんといえば「経営の神様」として有名ですが、松下電器のようなすごい会社を作れたのもあの時代だったから、という気もして。もし今生きていたら、同じことができたのかどうか。


倉橋

あの頃と今とでは、求められるものも違うでしょうしね。とはいえ、やっぱり立派な会社は作られていたんじゃないでしょうか。当時から小手先のテクニックというよりは、原理原則で動いていた人だと思いますから。

安田

なるほど。確かに「うちは家電を作ってるんじゃない、人間を作っているんだ」とまで仰ってましたからね。完全週休二日制を導入したのも民間企業ではいち早かったし。思想自体はすごく先進的だった。


倉橋

そうそう。だから「時代に合わせてやり方を変える柔軟さ」も持っていたように思います。

安田

なるほど。ということは、松下さんはかつて「絶対に社員をクビにしない」って言ってましたけど、今のパナソニックのようにリストラをしているかもしれないわけですね。


倉橋

まぁ、そう言われてしまえば可能性はあるんじゃないですかね。タラレバの話ではありますけど。

安田

まぁ松下さんが成功されたのは、当時のパナソニックの「大量生産で安く売るビジネスモデル」のおかげかもしれませんし。


倉橋

実際すごく優れたビジネスモデルですよね。あの頃は物不足の時代で、カラーテレビや冷蔵庫、洗濯機を安く大量に供給する使命があった。そういう意味では社会的貢献度もすごかったでしょうし。

安田

そうなんですよね。だからこそ、今の時代だったらどうなんだろうと思うんです。もうモノは行き渡ってしまっているから、大量に作って売るだけでは生き残れない。事業そのものを生み出すクリエイティブさがないと、原理原則だけでは通用しない気もして。


倉橋

当時の日本はメーカーが圧倒的に強かった時代ですからね。今のように流通や消費者が主導権を握っている社会とはまったく違う。ちなみに僕は流通の人間なので、ダイエーの中内さんにもすごく共感するところがあります。彼は「価格は消費者が決める」という革命を起こした人で。

安田

ああ、ナショナルショップがメーカー希望小売価格を守っていたなかで、中内さんがそれを崩したわけですもんね。安く売る店には卸さない、なんてことが普通に行われていた時代に。


倉橋

そうそう。ともあれ、当時と今とはまたさらに感覚が違う。僕がジャッジするのもおこがましいんですが、経営の難易度は今の方が格段に上がってると思いますね。人手不足で採用難という新たな課題もあるし。

安田

そうでしょうねぇ。ちなみにこういう話ってよく野球でも比較されてますよね。今の大谷翔平と昔の長嶋茂雄とか王貞治、どっちがすごいのかみたいな(笑)。

倉橋

将棋の藤井聡太さんと羽生善治さんなんかもそうですよね。もちろん話としては盛り上がりますけど、実際はフラットに比較なんてできないんですよね。時代も違えば前提条件も違うわけで。

安田

そうそう。特に最近はますます入れ替わりが激しいと言うか、毎日のように状況が変わっている。ビジネスでも昔は「一度事業を作れば30年はもつ」なんて言われてましたけど、今は10年後すらまったく予測できませんからね。

倉橋

そうなんですよ。実際事業をしているとそれをすごく実感します。ウチが海外展開を急いでいるのもそのあたりが理由で。

安田

ああ、なるほど。確かに国内市場一本足では、どうしても限界がありますもんね。特にこれからは人口減少が確実ですし。

倉橋

ええ。国内市場は確実に縮小しますから、海外市場に向けて動くのは必然でしょう。中でも東南アジアは市場として非常に魅力的ですし、日本の中小企業がもっと外に出ていくべきだと思います。

安田

それでいうと、イタリアなんかも参考になりますよね。中小企業がブランド力を武器にして、世界中にファンを持っている。地元だけじゃなく世界を見てビジネスしてるんですよね。日本の技術力の高い老舗企業も、海外に販路を広げたら確実にファンは増えると思いますよ。

倉橋

本当ですね。そういう国内の質の高い商品を仕入れて、海外で売るのは面白いだろうなぁ。

安田

ああ、なるほど。販路を広げるお手伝いではなく、あくまで自分で売りたいと。さすが根っからの商売人ですね(笑)。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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