第279回「何のための大学なのか」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第278回「なぜ日本はオワコンに投資するのか」

 第279回「何のための大学なのか」 


安田

大学の学費がどんどん上がってますね。これ以上値上がりしたら借金しても行けなくなります。

石塚

おっしゃる通り。大問題ですよ。

安田

とはいえ大学も赤字じゃ運営できないし。ハーバードやスタンフォードは赤字どころかすごい利益だって聞きますけど。

石塚

その通りです。

安田

なぜ日本の大学はそうならないんですか?

石塚

1番の理由は大学設置法に縛られているから。必ず土地を用意して、建物を建てて、図書館作って、グラウンド作って、っていう仕様が決まってるんです。ハードにものすごいお金がかかるわけですよ。

安田

なるほど。

石塚

しかも何年かに一回は建て替えをしなきゃいけない。だけどその費用を学生に負担させるっておかしな話ですよ。

安田

海外は成功した卒業生の寄付もすごいですよね。寄付した人の名前がついた建物だらけですよ。

石塚

おっしゃる通り。ただ基本的には大学がもっとビジネススキルを磨かないと。

安田

日本の大学にはそういうスキルがないんですか?

石塚

大人と子供ぐらい違いますね。

安田

そんなに。

石塚

ハーバードやスタンフォードはウォールストリートの凄腕ファンドマネージャーを大枚はたいて雇ってます。ものすごい利回りでいろんなことしてます。

安田

優秀な学生も奨学金で引っ張ってくるし。彼らが卒業して学校が有名になって、寄付もたくさんしてもらえるし。日本でもこれぐらいできそうですけど。

石塚

無理でしょう。ファンド運用して10%以上で回してる大学なんてないんじゃないかな。

安田

金儲けがうまい人材を育てようとしている割には、金儲けが下手ですよね。

石塚

発想がぜんぶ短期的なんですよ。

安田

基礎研究の予算がどんどん削られているそうで。

石塚

理系の基礎研究をやるには潤沢な資金がいるんですよ。だけど本当はこういう、すぐには金にならない研究に投資しなくちゃいけない。

安田

そういうところにこそ税金を使えばいいのに。

石塚

おっしゃる通り。もうひとつ決定的にまずいのは、修士や博士課程まで行くと就職先がなくなって食えなくなること。だからみんな諦めてしまう。

安田

なぜ学部生の方が就職に有利なのか。日本って不思議ですよね。

石塚

アメリカは学部生と博士じゃもう全然初任給が違うじゃないですか。

安田

違いますね。ドクターという肩書きを持っていたら、どこに行ってもドクターとしてちゃんと扱われます。

石塚

初任給から何から違うじゃないですか。日本にはそういう仕組み自体がないから。

安田

専門知識を持っていても優遇されないっていう。ほんと短期的にしか見てないですよね。

石塚

その通り。

安田

せめて国がもっとお金を使えばいいのに。

石塚

国がやるべきは今の10倍ぐらいお金投入すること。そして口出ししないこと。役人の悪い癖ですごく細かい報告を求めるんですよ。

安田

求めそう(笑)

石塚

大学教授が何にいちばん時間を使うかっていうと、会議と書類書きなんですって。国から予算をもらうと、あれを出せ、これを出せって報告書がすごいうるさいわけですよ。やっとそれが終わったと思ったら教授会があって。研究する時間なんかないわけです。

安田

だから優秀な人はみんな海外に出ていっちゃう。

石塚

ノーベル賞を受賞した博士が言ってましたね。日本は嫌いじゃないけど仕事はアメリカがやりやすいって。好きな研究だけ続けられるから。

安田

本音でしょうね。

石塚

本音ですよ。だけどあんな事を言わせちゃいけないでしょう。

安田

今後どうなると思いますか。今でさえ大学生の半分以上が借金を抱えていて。それでもみんな大学に行き続けるんですか。

石塚

新卒の就基準が変わらない限りだらだら続きますよ。企業が新卒一括採用にこだわる限りは大学には行かざるを得ない。

安田

就職するために大学の卒業証書を買いに行くと。

石塚

なん百万も借金して就職パスを買いに行くわけですよ。ほんと無意味だと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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