新卒採用の条件

日本ではまだ新卒一括採用が主流である。社会人経験のない若者を採用し、丁寧な新人研修を行う。研修が終われば戦力になるわけではない。黒字になるまで最低でも2年。平均すれば3年くらいはかかる。

私は十数年前まで一貫して中小企業に新卒採用を勧めてきた。その理由は3つ。中途より優秀な素材が確保できること。企業カルチャーに染めやすいこと。そして定着率がいいことである。だが状況は大きく変わった。

まず優秀な若者が転職市場に出てくるようになった。SNSによる情報共有で企業カルチャーに染めにくくなった。そして大企業も含め3年以内の離職率が跳ね上がった。今や就職と転職はセットである。

新卒で学びたい会社。20代後半に学びたい会社。30代で働きたい会社。40代でやりたい仕事。50代で理想とする生き方。優秀でまともな人材ほどこのような人生設計をきちんと立てている。もはやひとつの会社に生涯を捧げる新卒など希少生物なのである。

小学生、中学生、高校生、大学生と、入学と卒業を繰り返して人は成長していく。社会人もまったく同じ構造になったと考えればいい。人生の成長曲線に合わせて職場もステップアップしていく。

2社目以降の会社はまったく問題がない。これまでのキャリアで身に付けたスキルを確認する。それを使って給料以上の働きをしてくれればいい。求めるスキルが身に付いたら辞めてくれても問題ない。働く側・雇う側にwin-winの関係が出来上がっている。

問題は新卒を採用して育てる会社である。スキルが身に付いた時点で辞められてしまうと会社側は元が取れない。だが働く側はスキルが付いた後に会社に居続ける理由がない。このアンバランスを解決しない限り新卒採用は成り立たなくなるだろう。

まだ何もできない人材に給料を払いながら仕事を教えていく。これを回収するにはある程度の期間が必要である。何もできない小学生が卒業に6年を要するように、新卒社員は最低就業期間を6年と定めるべきだ。もちろん労働法があるので契約では縛れない。だから口約束でいい。

「卒業するのは構わない。ただし6年間は辞めないでほしい」これを前提に新人研修を行う。これだけで定着率は間違いなく上がる。重要なのは約束させること。そして終わりを決めることだ。人はゴールがあるからそれを目標に続けられる。「ずっと働き続けてくれ」などと無茶な要望をするから2〜3年で辞められてしまうのである。

 

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