このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/ ベテランの味
10年来、お世話になっている大手メーカー、「若手ホープのKくん」から連絡をいただき、丸の内本社に伺いました。
コロナの収束がようやく見え始めてきたようですが、来春から「アジア現地法人への異動」を打診されたのだそうです。
新人研修時に初めてお会いした頃から、ひときわ目立って頼もしく、周囲からの期待を一身に集めていたKくん。
グループワークでは、チームを盛り上げつつも、ハッキリと自己主張し、目標を成し遂げるために、懸命にまとめていく姿が印象的でした。
そんな彼が、
「海外での勤務には、もともと憧れもありましたし、なにより弊社のアジアマーケットは、急成長していて、今後も注力が求められている、やりがいある仕事で、とても興味はあります」
「ですが、、、」
・今の職場の仲間が好き、離れたくない
・初めての海外勤務で少し不安
・自分が海外で通用するのか怖い
・言葉もカタコトだし、、
・ここで失敗したら、本社に戻って来られないのでは、、
などの理由をあげ、
「受けるか、どうか、迷っているのです。。」
と、昼下がりの社内フリースペースでつぶやくのです。
「行ったほうが良いよ」「今回は見送れば」どちらを言うことなく、ただただ聞いていましたが、
ふと。近くの席でPCを叩いていた方が寄ってきて。
「Kくん。久しぶりだね」
「聞こえてきちゃったんだけどさ」
「迷っている、ってことは関心があるんでしょ?だったら迷っている時間はもったいないかな、って思うよ」
「“海外”も“転勤”も、ひとがつけた言葉でしょ。そこに境界線はなくって、自分がラインをひいちゃっているだけ。どんどん飛び越えて、もっと活躍しちゃいなよ!」
それだけ話すと、PCを片付け、頑張ってと声をかけながら、去って行かれました。
聞くと。新人の頃お世話になったベテランの先輩で、いまは別の部署にて再雇用で働いているのだとか。
若い頃の先輩に、どんな出来事があって、どんな気持ちの葛藤があったのかは存じ上げませんが、Kくんには、ズッシリと響いたようです。
「挑戦することにします!」
と、晴れ晴れした笑顔で、決意を表していました。
深みも重みもある「素敵なベテラン」になってみたいものです。