このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/真逆の戦略
ファクトリー・オートメーション総合メーカーとして、世界46ヵ国240拠点に展開し、30万社以上の企業と取引をしている「キーエンス」。
「高収益企業」としても知られており、「平均年収=2183万円」と、国内企業で最高レベルを誇ります。
そんな同社の「特徴的なビジネスモデル」が学べるセミナーに参加しましたが、取扱商品の、なんと7割!に「世界初・業界初」のテクノロジーが駆使されているのだそうで、、
・原動力となっているのが「グローバルダイレクトセールス」という直販システム
・通常、多くのメーカーは企画・開発に特化し、販売は代理店などを通して行うが、それらを通すことで「顧客との距離」が遠くなり、生の声が聞こえなくなってしまうというデメリットも存在
・一方、「キーエンス」は代理店や販社を通さず、専門知識を持った営業担当者が生産現場に足を運び、課題や悩みを直接伺い、「潜在ニーズ」を見つけだし、顧客の課題に合わせて最適なソリューションを提案
・さらには、顧客のリアルな声を商品開発にフィードバックし、サービスの改良や新商品開発に活用
・この「ビジネスモデル」こそが、顧客との信頼関係を築き、ユーザーに寄り添った商品開発を実現する最大の特徴
なんて話を伺いましたが、この程度であれば、他社も真似できなくはないようにも感じます。。
すると、
「皆さんは『Apple』や『Amazon』が、サプライヤー(製造委託先など)への支払いを遅らせて、現金を確保していることはご存知ですか?」
要するに、
「入金よりも支払いを遅らせることで、長い期間、手元に現金を残せるので、運転資金が少なくて済む。だから、楽な経営ができる」
と、進行の元外資コンサルさんが語ります。
私が経営する『たかまり』、『BFI』、『さざなみ』でも、同様の取り組みをしています。
ところが、
「キーエンス」は、これとは「真逆」を行って高収益を達成しているのだそうです。
「Apple、Amazonの『真逆』を取り入れ、同様に『圧倒的に儲かっている!』ということは、正解はひとつではありませんよね」と進めます。
・顧客からの支払い期日に余裕を持たせるとともに、サプライヤーへの支払いを早めている
・これにより、「顧客との信頼関係」「サプライヤーとの信頼関係」を高めている
・顧客との信頼関係があるため、現場訪問もしやすく、潜在ニーズをつかみやすい
・サプライヤーとも信頼関係があるため、コストダウンなどの価格交渉や、納期を早めてもらうなどのお願いも通りやすい
「無理は言うけど、金払いは悪い」そんな対応をとっていたら、顧客にも関係先にも相手にされなくなるでしょう。
要するに、キーエンスは、日本人気質にあった「損して得取れ」的な考え方を実践しているのです。
なるほど。
およそ40%ほどといわれる「圧倒的な利益率」を生み出す秘訣は、「支払いを早くして、入金を遅らせている」ところにあったわけですね。
一緒に参加していた、某大手の営業部長であり、ゴリゴリのネゴシエーターBさんが、
「今後のネゴシエーション(交渉)シーンでは、理論武装して相手を説得・論破するんじゃなく、もう少し、相手の要望を実践してあげようかな」
と、真剣な面持ちでメモをとっておりましたとさ。