このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/しあわせの定義
研修講師さんたちが多数集まる宴席での会話。
「最近はどんなテーマが流行っているの?」
「どんな研修を多く引き受けているの?」
そんな問いがお互いに投げかけられます。
話を伺っていますと、近年の人材育成における「キーワード」としては、「人的資本開示、心理的安全性、DX人材育成、リモートワーク対策、サステナビリティ、リスキリング」などなどがあがります。
「働き方の多様化に伴い、価値観が大きく変わり、」
「国内需要の増加だけではなく、海外売上比率の向上をも目指す大手各社さんに向けての人材・組織開発サポートは大変意義があり、」
「そんな仕事に携わらせていただけて、ありがたいですよね!」
と、ある人気講師さんが語ります。
そのうち、他の講師さんたちの雑談は、だんだんと「フィーの話」になってきましたが、
「間に入っている研修会社は、ほどんど何もしていないに等しいのに、、」
「リピート営業にもめちゃくちゃ貢献しているのに、、」
「どこそこ経由での仕事はフィーが安くて、、」
などとタカマツにとっては耳の痛いお話も。。
ところが、前出の人気講師Aさんは、
「安いフィーだなんて思ったことは、駆け出しの初年度くらいなもんで、わたしは十分過ぎるほど納得できる金額で発注いただいていますよ」
穏やかに語ります。
「研修会社さんは、日々お客さんとコミュニケーションを深めるために時間を使ってくれていて、ありがたい」
「わたしは、研修当日にお会いさせていただく受講生さんたちに有益な機会を提供することに集中させてもらってますよ」
と、より一層の微笑みを携えて語ります。
「なんて素敵な方なんや!!」とはタカマツの心の声。
Aさんが席を外したタイミングで、他の講師さんたちが、
「Aさんがやっている研修テーマだったら、僕もできますよ」
「私もオリジナルで開発できるんで、対応可能です」
「どんどん依頼してくださいよ」
と、タカマツや他の研修会社の社長たちに声がけが続きます。。
そんな出来事を、A講師を知っている超大手の人事担当役員さんとの打合せ時に披露したところ、
「ウチもAさんには『高値で発注』させてもらっていますけど」
「Aさんは、高松さんたちのような研修会社さんとの『チーム感』がすごく伝わってくるんですよね」
「われわれ人事や受講生に、講師だけが何かを伝えてくれるというのは限界があると思いますし、それは講師が『個人戦に集中』しているだけであって、、」
「なんて言うんでしょうか。『ひとりよがり』にも映るんですよ」
「結局、Aさんは、自分の役割の中に『チームを引き立てる』『仲間の力をも引き出す』、そんなところまでやる」
「それをも『自分の役割』だと理解して自然に振る舞っているように映るんですよ」
と、何やら深い洞察をお伝えいただいたのであります。
続けて、役員さんは
「まあ、Aさんがやられているテーマ、内容を『自分もできる!』 と言う方がいてもおかしくはないでしょうし、実際にできる講師さんなのかもしれませんが、」
「それが、われわれ人事や研修エージェントさんに伝わらないから、『安いフィーの仕事ばかり』に時間を取られるんじゃないかと思います」
「でも、いいじゃないですか。幸せそうで」
「だって、実際にAさんの仕事ぶりを目の当たりにしたら、『ご自身との違いに、その実力差』に凹んでしまいますよ」
「そんなので落ち込んじゃったりしたら、かわいそうでしょ。不幸になっちゃいますよ」
すると打合せに同席していた若手人事さんがポロッとご感想を。
「幸せとは、不幸を認識できないことなのかもしれませんね」
「自分はできる!と思い込んでいるって、ある意味幸せな状態ですよね!」
なるほど、確かにそうなのかもしれませんね。
しあわせを噛み締めたタカマツなのであります。。