第23回「アラブ人にも仏教徒やキリスト教徒はいるのでしょうか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「アラブ人にも仏教徒やキリスト教徒はいるのでしょうか?」

   回答   

はい、キリスト教や仏教などイスラム教以外を信仰する人々はいます。
日本にも仏教徒だけではなくキリスト教徒やイスラム教徒がいるのと同様です。

ただ、「アラブ人」と言う場合、民族や国籍を考える必要が出てきて話が複雑になりがちなので、今回はざっくりと「中東地域に居住している人々」として捉えてみます。

たとえば、レバノンは40%がキリスト教徒です。昨年楽器ケースに入って日本を脱出し、世間を騒がせたカルロス・ゴーン氏もレバノン人で、彼もキリスト教徒です。
キリスト教徒はアメリカやヨーロッパに多いので、なんとなく欧米の宗教というイメージがありますが、発祥地は現在のパレスチナで、ゴリゴリの中東です。エルサレムが聖地ですから、周辺国にキリスト教徒がいるのは当然と言えるかもしれません。

また全体からすればごく少数ですが、仏教徒もいます。一番比率が高いのはなんとサウジアラビア。中東地域の仏教徒の約50%がいると言われています。そのほとんどが外国人労働者ですが、イスラムの盟主と言われる国に一番数多く存在しているとは少し驚きですね。

中東ではありませんが、世界で最もイスラム教徒の数が多い国はインドネシアで、8割以上がイスラム教徒です。しかし、それ以外にもキリスト教、ヒンドゥー教、仏教と多彩な宗教コミュニティがあります。また、宗教のカテゴリではないものの、華僑のコミュニティも存在感があります。
ラマダン、クリスマス、春節。それぞれのコミュニティの祭事が行われるので、必然的に年中行事は多様性に富みます。


(↑世界の宗教地図。青がキリスト教、緑がイスラム教、円の大きさは人口。Data Atlas of the Worldより)

宗教的イベントの多様性、ということでは日本も負けていません。(勝ち負けではありませんが)
日本人は無宗教を自認する人が多く、様々な宗教にルーツを持つ祭事や催しをイベント化して楽しむ傾向にあります。年始の神社は初詣でごった返し、秋にはハロウィンが行われ、12月の街はクリスマス一色に彩られます。結婚時には教会で神に永遠の愛を誓い、葬儀は仏教スタイルで行います。
思想の変わらない同一人物が、これほど宗教を横断してイベントに参加するというのは世界的に見ても珍しいのではないでしょうか?
この点がインドネシアの例とは決定的に違うと思います。
日本人が宗教イベントを横断して参加する姿は、ベースとなる信仰がある人々には理解しがたい現象として映るかもしれません。普通、キリスト教徒はラマダン期に断食しませんから。

ちなみに、日本人の信仰に対する姿勢は、

●特定の信仰を持っている
●特定の信仰を持っていない
●特定の信仰を持っていないが、宗教心は大切と考える

と大きく分けて3つで、それぞれ3割程度で拮抗しているそうです。

すこし横道に逸れました。
質問に戻ると、アラブはイスラム教一色のように思われがちですが、他の宗教を信仰している人は存在します。

連想して考えるうちに、日本の特異性が浮かび上がってきました。近年、ハロウィンが急激に盛り上がったことを考えると、もし今後日本でもイスラム教徒の数が増えれば関連イベントが催される可能性はゼロではないかもしれません。その際は敬意をもって臨みたいですね。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ)

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

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