日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「産油国でも電気自動車は走っているのですか?自分の首を絞めるような商品ですけど。(その1)」
回答
はい、産油国にもEV(電気自動車)はあります。
世界的に環境保全の視点からEV化へと向かう潮流があり、それに乗っているわけですが、新しいものやハイテクなものが好まれる地域ですので、導入に抵抗はあまりないのだと思います。
サウジアラビアには自国のEVメーカーを持とうという計画があるようですし、UAEでは自動運転のEVを増やそうという国家戦略プランもあります。
情報が取りづらいので謎だと思われがちな国々ですが、割と時代の流れに敏感なんですよね。
質問に「自分の首を絞めるような商品」とありますが、たしかにEVはガソリンをエネルギー源としないので、石油が主力商品の湾岸産油国にとっては好ましくない商品だと言えます。
しかし、英BP社のレポートによると、「2040年以降に世界で販売される全ての乗用車がEV化されたとしても、世界の石油需要への影響は10%程度にすぎない。また、EV化によってなくなる需要を考慮しても石油の総需要は現在よりも多くなる」との予測があります。
そもそも一口にEV化と言っても、車種による規制や電池の原料調達など様々な理由から、全ての自動車をEVに変えるというのは現実的ではないようです。
となると、EV化の推進が産油国に与える影響は意外と限定的なのかもしれません。
ただ、仮にEV化の影響がそれほどではないとしても、コロナの世界的拡大によって飛行機や船など移動手段の燃料としての需要が大幅に減ったので、その影響を大きく受けているのは事実だと思います。
今のように人が動かず経済活動が滞ったままだと、石油も売れにくいでしょうね。
ところでEVで思い出しましたが、サウジアラビアにはEVに置き換えるどころか「車自体をなくす」という謳い文句を持つ、かなり尖った都市計画があります。
こちら次回お伝えできればと思います。
この記事を書いた人
大西 啓介(おおにし けいすけ)
大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。
写真はサウジアラビアのカフェにて。