日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「日本はなかなか変われないのに、サウジが急激なスピードで変化できているのはなぜなのですか?」
回答
数回にわたり、開国するサウジアラビアについてレポートしてきました。
観光ビザの発行にはじまり、映画や音楽が解禁され、さまざまな国際的イベントが誘致されているだけでなく、男女が同じ空間にいることも可能となり、国内で楽しめるエンターテインメントが爆発的に増えました。
これまで閉じられた国だったサウジアラビアが、いかに急激に変わりつつあるか感じてもらえたかと思います。
社会が変わる。
言葉で言うのは簡単ですが、そのためにはお金だけでなく大きなエネルギーが必要となります。
変化の程度が大きければ大きいほど、そして急激であればあるほど、人々の抵抗感も強くなります。
そのため、変化が必要なのはわかっていても結局変わることができないケースは多々あると思いますが、なぜサウジアラビアではドラスティックな変化が起こったのでしょうか?
【変化を支えるもの】
理由はもちろん一つではないと思いますが、「若さ」が重要なキーワードだと考えています。
その象徴として、この改革の旗振り役であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は現在36歳とリーダーとしては若い世代です。
新しい産業を興すためとはいえ、長年タブー視されてきた領域にメスを入れるので、反対する人も少なくなかったはず。
その中でここまで実行できているのは、やはり若さによる勢いの部分が大きいと思います。
とはいえ、スムーズな社会的変化を達成するためにはリーダーが若くて勢いがあるだけでは不十分で、多数の国民の支持が不可欠でしょう。
一般的に若い世代のほうが変化を前向きにとらえる傾向にあると思います。
サウジアラビアは国民の平均年齢が30.8歳と若いので、改革に対する支持が比較的得やすかったのかもしれません。
(↑サウジ国民の平均年齢は近隣湾岸諸国の中でも若い部類。The world fact bookより)
(↑また、人口の約7割が40歳以下。General Authority of Statisticsより)
最近の変化についてどう思っているのかと数人のサウジ人に聞いたところ、概ね好意的に思っているとの回答でした。
勢いのある若い皇太子が動き出したのに合わせて、若年層を中心に多くの国民が同調し、変化を受け入れているのではないでしょうか。
【変化への揺り戻しはあるのか?】
とはいえ、これまで長らく存在していた諸々のタブーを短期間に次々と解禁したので、抵抗感を完全に拭い去ることが難しいのもまた事実です。
実際、今でも年配の人を中心に拒絶反応を示す人は存在します。
また、都市部で変化が見られる一方、郊外ではまだまだ保守的な空気は残っていると聞きます。
非常に急激かつ大きな変化のため、今後揺り戻しがあるかもしれません。
ただ、一度感じた自由を奪われたときの反動の大きさを考えると、方向性としては今の流れが続いていくと予想されますので、サウジアラビアはこれからも要注目の国だと思います。
この記事を書いた人
大西 啓介(おおにし けいすけ)
大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。
写真はサウジアラビアのカフェにて。
【お知らせ】
ポッドキャスト始めました。
中東や東南アジアを中心に、海外の文化(ときどきビジネス)について喋る番組です。
番組名: Friday Airport Lounge
毎週金曜17時更新
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