第62回「eスポーツはサウジアラビアでも人気がありますか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「eスポーツはサウジアラビアでも人気がありますか?」

   回答   

はい、大変あります。
世界的にもそうだと思いますが、これからどんどん盛り上がっていくのではないでしょうか。

【eスポーツの祭典】
2022年7月14日から約8週間、首都リヤドで『Gamers8』と呼ばれるeスポーツの祭典が開催されます。
『フォートナイト』や『レインボーシックス』、『ロケットリーグ』など世界的に有名なゲームタイトルの試合が行われます。
たとえば、『ロケットリーグ』はジャンプやロケット飛行ができる特殊な車を操作してサッカーを行う架空のスポーツを題材としたゲームですが、このイベントにはその世界最高峰のチームが参戦し、200万USドル(約2億7千万円)の賞金をかけてトーナメントを競い合います。
全体の賞金総額は1,500万USドルで、現在のレートで換算すると実に20億円以上。
非常に規模の大きい大会であることが伺えます。

(↑Gamers8のオフィシャルサイトより)

【国民の7割がゲーマー?】
アラブニュースによれば、「サウジアラビアにはゲーマーが推定2,350万人いる」とのこと。「ゲーマー」の定義が気になるところですが、総人口が約3,400万人なので全体の7割近い数字です。
若年層が多く、日中の外気温が非常に高くなる国ということを考えれば、インドアゲームが流行る土壌があるのは想像に難くありません。
とはいえ、日本の感覚からすればこの7割という数字には驚かされます。
この『Gamers8』を主催しているのはサウジeスポーツ連盟ですが、この分野の市場規模は相当大きいことが見込めますから、国が目をつけるのもわかる気がします。

【今後間違いなく伸びる分野の一つ】
このイベント、選手入場の際にはレーザービームや炎が使われたり、最新技術を使った「光の壁」なるものがゲームアリーナを囲んだりといった演出が行われており、オランダやスコットランド、ブラジルなど世界各地からの来場者を楽しませているとのこと。
また、このイベントではメインのeスポーツの他に、DJやミュージシャンのコンサート、ワークショップも併せて行われているようです。
背景には、最近サウジ国内で音楽が解禁された影響が大きくあると思います。ゲームと音楽は密接につながっているので、関連分野としての音楽産業が盛り上がっているのではないかと思います。

冒頭の質問に戻ると、他の国同様サウジアラビアでもeスポーツは人気が高いですし、質的にも量的にも大きく市場が育っていくのは間違いないと考えています。

日本に目を向けてみると大規模なゲーム産業があるにも関わらず、主に法規制による制約のためにeスポーツの分野はまだそれほど伸びていません。
日本でもそう遠くない未来に土壌が整うことを期待しつつ、eスポーツ関連分野の企業としては、サウジアラビアのように比較的この分野に力を入れている国での展開を考えてみる価値はあるのではないでしょうか。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。

海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

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