庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第108回 庭師を志す人が若いうちにすべきこと

以前も話題に出ましたけど、現場で働く方の収入が伸びてますよね。一方でホワイトカラー、特に大企業の管理職という、いわゆる「エリート層」の仕事が減少してきている。

ちなみにもし10代の若い子から「自分の納得できる庭を作れる職人になりたい」と言われたら、どんなアドバイスをしますか? 「この世界で本気で生きていくならここは頑張れ」みたいなことがあれば教えてほしいです。

そうですね(笑)。あとこの対談でも何度もお話させていただいていますが、木の知識は重要ですね。木を扱うには、その特性をしっかり理解しておかないといけない。それができないまま自然な樹形を引き出す剪定はできませんから。

そういうのも大事ですが、やはり直接触れることが一番です。実際に木を切って、同じ木を毎年手入れしていくと「今年はこう伸びたから次はこう剪定しよう」と考えられるようになる。結局のところ、実体験の積み重ねが大事なんです。

そうですね。まずは先輩と一緒に現場に入ることになると思いますが、そこで実際の木に触れつつ、先輩の動きを見て徐々に理解していく。会社によっては会社の管理している木で練習させてもらえるかもしれません。

うーん、やっぱり技術を身につけるというよりは、自然をよく観察しておくといいと思います。山や滝を見て「どうしてこういう姿になったのか」を考えたり。自然の形を理解しておくと、後で技術を学ぶときに吸収が早いんです。

いいと思いますね。もっとも、庭という時点で自然そのものではないんですけどね。もしかしたら有名なお寺の庭を見ても「これは不自然だ」と感じることもあるかもしれません。その違和感を敏感に捉えられるようになると、成長も早いんじゃないかな。

深いですねぇ。人間は人工物を作りながらも、結局は自然に近づきたがる。中島さんのお庭を美しい、居心地がいいと感じるのは自然に寄り添った形だからなのかもしれませんね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。