庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第111回 伝統技術とAIの「理想の共存方法」

いまIT業界ではAIの進化が目覚ましく、人間がやっていた仕事が次々とAIに置き換わっています。そしてこの流れは庭づくりのような伝統的な職人の世界にも、いずれ大きな影響を与えてくるのではないかなと。

なるほど。気持ちはよく分かります。でも最近のAIの進化は凄まじいですからね。一般的な知識だけでなく、特定の個人の知識やスタイルを学習させて、「その人だけのオリジナルAI」を育てることが可能になっているんですよ。

できるんですよ。例えば私がこれまで書いた文章をすべてAIに読み込ませれば、「安田佳生ならこう書く」という文体を学習し、私らしい文章を自動で生成してくれる。これを庭づくりに応用すれば、「中島さんAI」が作れるんじゃないかと。

仰るとおりです。中島さんがこれまで作られたお庭や設計思想、木の知識などをすべてインプットするんです。そうすれば、新しいお客様から要望を聞いたときに、AIが中島さんらしいデザイン案をいくつか提案してくれる。ゼロから考える手間が省け、より創造的な部分に集中できると思いません?

しかもそれだけじゃなく、お弟子さんが剪定作業をしているときにその写真と完成イメージをAIに送ったら、中島さんの代わりにAIが指示を出してくれるようにもなるんです。「中島さんなら、ここの枝をもう少しこう切るはずですよ」なんて。

そうですよね。AIは単なる自動化ツールではなく、優秀なアシスタントや分身になってくれるんです。人を一人雇うことを考えれば、月数万円の利用料は決して高くない。中島さんがこれまで培ってきた技術や感性を、「AI」という形で継承していく、という考え方もできるかもしれません。

それは本当にありがたいですね。自分の知識だけでは、どうしても発想が偏ってしまうことがありますから。それにしてもちょっと前は「AIが仕事を奪う」なんて言われていたのに、随分と状況が替わってきたんですね。

ええ。それに最終的に石を積んだり、木を切ったりするのは人間なので、そもそもAIが全ての作業を奪うわけではありませんから。デザインを考えたり情報収集をしたりなど、これまで多大な時間がかかっていた部分をサポートしてもらうんです。

それは余裕で作成できますよ。最初は少し戸惑うかもしれませんが、スマホを使うのと同じで、一度慣れてしまえばもう手放せない。どうやって動いているかの仕組みを理解する必要なんてなくて、便利な道具として使いこなせばいいんです。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。