庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第120回 高い塀によって失われる「街の一体感」

中島さんがよく仰っている「借景」も、お互いの庭が景色を提供し合うギブアンドテイクの関係じゃないですか。でも高い塀を作ると、「ここは俺の土地だ」という排他的な印象を受けてしまうんですよ。

昔、世田谷で楳図かずおさんという漫画家が、赤と白のすごく派手な家を建てたんです。その家を建てたら、周りの住民から「街の景観が悪くなる」って、すごい苦情が出たことがあって。もちろん「俺の土地なんだから俺の自由じゃないか」っていう考え方もあると思うんです。でも家や庭って、どうしても外から見えちゃうじゃないですか。

うーん、もちろんそのあたりはお客様ごとに違うとは思うんですけどね。庭師の目線で言わせてもらえるなら、ご近所同士で庭を眺めて楽しんでもらえたら嬉しいなと。「景色のいい庭」が続く街を作りたいと本気で思ってますから。

ああ、そう言っていただけるとすごく報われます。昔から「散歩したくなるような街」を作りたいと思っていまして、もちろんそのためには、1軒だけでなく街全体がそういう作られ方をする必要があるんですけど。

確かになぁ。街全体がそうなるのは簡単ではないでしょうが、1区画か2区画ぐらいだけでもそういう場所になると素敵ですよね。そういう意味でも「近所の人にとっても心地よい、皆の庭」という意識が大事になってくるんじゃないかなぁと。

中島さんにお願いするという時点で、すでに「外から見た庭」「街の景観」というのを意識してる人が多いということですね。そう考えると、中島さんが手がける庭がこれから増えていくと、その街の景色自体も少しずつ変わっていく気がしますね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















