第125回 借景ならぬ「マイ景」を楽しむ庭づくり

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第125回 借景ならぬ「マイ景」を楽しむ庭づくり

安田

以前お話しされていた、岐阜県の美濃加茂市で「自宅の敷地内に公園を作る」というプロジェクトがあったじゃないですか。その後どうなりました?


中島

ああ、あれはおかげさまで、無事に完成しました。

安田

おお! それはよかったです。個人のお宅の敷地内なんだけど、「公園にあるような林を作りたい」というご要望だったとか。


中島

そうなんです。元々350坪くらいの広大な土地に、建物と庭を含めた居住スペースで200坪、残りの150坪を公園エリアにしたという配分ですね。

安田

いやぁ、すごいなぁ。建坪と庭で200坪という時点で規格外ですけど、さらに別に150坪の公園があるというのが想像つかないですよ。そもそも公園って皆で使うイメージですけど、今回はあくまでプライベートな空間なんですよね。


中島

そうなんです。個人の所有地なので、自然公園のような林をイメージして作りました。ただ、完全に庭の延長としてつなげるのではなく、居住スペースの庭とはフェンスやブロックで区切ってあるんです。

安田

えっ、そうなんですか。お庭とは別物なんですね。普通はフェンスで囲うなら敷地全体だろうという気もするんですが、今回は居住エリアだけを囲って、公園部分はあえて囲わずにオープンにしていると。


中島

ええ。通りがかった人から見ても、そこが個人の庭の一部だとは気づかないような作りになっています。

安田

なるほどなぁ。でも不思議ですよね。自分たちの土地なのにわざわざ区切るなんて。どういう意図があるんでしょう?


中島

一番の理由はワンちゃんですね。柴犬を飼っていらっしゃって、居住スペースの庭は約25坪が天然芝のドッグランになっているんです。だからそちらはしっかり囲う必要があって。

安田

あ、そうなんですか! ワンちゃんのためのお庭だったんですね。でも25坪の芝生なんて、手入れだけでも大変そうだ。


中島

そうですね。その一方で、「お子さんと一緒に散策してドングリを拾ったりできる自然な場所も残したい」というご希望もありまして。「整えられた芝生の庭」と「自然のままの林」では機能も違いますから、フェンスでエリアを分けることにしました。

安田

なるほど。でもフェンスで仕切っちゃうと、庭から見た時に景色がプツンと途切れてしまいませんか? せっかく広い土地があるのにもったいないような。


中島

そこは芝生の庭の方にも少し植栽を入れて、木々が奥の公園の林と重なって見えるように配置しました。公園の林を背景として取り込む、いわゆる「借景」の手法ですね。

安田

借景といっても、奥の林も自分たちの土地だから借りてないですよね。ということは、「マイ景」ですね(笑)。


中島

確かに(笑)。「マイ景」っていい表現ですね。そうやって眺めても楽しめますし、中に入っても楽しめるようにも工夫しています。例えば「築山(つきやま)」という小山をいくつも作って、その中を散策できるようにあぜ道を通したり。

安田

へぇ、本格的だなぁ。ちなみに休憩所みたいなものもあるんですか? 本物の公園だと東屋(あずまや)があったりしますけど。

中島

ええ。テラスを作って、そこに藤棚のようなパーゴラという休憩スペースを設けてあります。タープも付いているので日差しも防げますし、椅子とテーブルを置いて、森の中でちょっとお茶を飲んでくつろげるような場所になっています。

安田

いいですねぇ。でも柵で囲っていないとなると、近所の人が「素敵な公園だわ」って勝手に入ってきたりしませんか? 「私有地につき立ち入り禁止」みたいな看板を出さないと、どんどん人気の場所になってしまいそうです。

中島

そこは施主様も「近所で仲良くなった方と一緒にお茶を飲めたらいいな」と仰っていたので、閉鎖的になりすぎないようにしているんです。ただ築山などで起伏をつけていることで、通りすがりにスタスタと入る感じにはならないようにしています。

安田

なるほどなぁ。「入ってもいいのかな? どうなのかな?」という絶妙なラインのデザインになっているわけですね(笑)。ちなみに林の中にはどんな木が植えられているんですか?

中島

四季を感じられるように花が咲く木がいいとのことで、ハナミズキヤマボウシツツジなどを植えました。あとはドングリ用にカシの木も植えています。

安田

ドングリ拾いをしたいと仰ってましたね。でもドングリが地面に落ちたら、自然に芽が出ていつか本当の森になってしまいそうですけど、そこは大丈夫なんですか?

中島

その点は全面に防草シートを敷いて、その上に砂利などを被せてあるので、勝手に雑草や木が生い茂ることはないようにしています。

安田

なるほど。地面の管理はしっかりされていると。それなら安心ですね。

中島

ええ。管理は楽にしつつ、季節感は大事にしたいので、ドングリ以外にもあとは紅葉も、春から赤くなる「ノムラモミジ」や、黄色く色づく種類のものを混ぜて、一年中色が楽しめるようにしています。

安田

家を出てすぐのところに、そんなふうに自然が楽しめる場所があったら楽しいでしょうねぇ。でも美濃加茂だったらちょっと行けば散策する山がたくさんありそうな気もしますけど。

中島

そこは住宅街なので、歩いていける範囲にはないんです。まだお子さんも小学生なので、自宅からすぐの場所で遊べる場所を作りたいというのがご夫婦のご希望でした。

安田

なるほどなぁ。それにしても、中島さんのところには面白いお仕事のご依頼がたくさん集まりますね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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