第135回 10年後の暮らしを見据えた「引き算の庭づくり」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第135回 10年後の暮らしを見据えた「引き算の庭づくり」

安田

以前、日本庭園ってヨーロッパの足し算で作る庭園と違って、「引き算」で考えると仰ってましたよね。木を植えるにしても、植えすぎてはいけない。やりすぎるよりは足りない方がまだいいというか。


中島

そうですね。僕個人としても、後者の方が好みです。

安田

ああ、やっぱりそうですよね。中島さんが引き算でお庭を作る場合、植えすぎないためには庭の広さによって植える本数を決めるわけですか。


中島

広さもありますが、室内からどう見せるかが重要ですね。全体の抜け感も大事にしたいので、リビングの窓の真正面にはあまり木を植えないようにしたり。

安田

ほう、なるほど。本数だけでなく、配置も意識する必要があると。


中島

ええ。あとは成長のバランスも意識しています。小さく植えた木が、大きな木を追い越すことがないようにとか。

安田

なるほど〜。ともあれ、お客さん側から「こういう木を植えたい」みたいな話も出てくると思うんですけど、どの程度要望を聞いている感じなんですか?


中島

なるべくご要望はお聞きしますが、細かい樹種の指定までは避けていただいていますね。指定された組み合わせでは空間のバランスがとれなかったりするので。

安田

ああ、そうか。どういう庭にしたいかを伝えて、お任せするのがいいんですね。


中島

そうですね。「紅葉した方がいい」とか「花が咲いた方がいい」というようなご要望をお聞きして、樹種自体はこちらで選んだ方が、最終的にお客様のイメージ通りになりやすいと思います。

安田

なるほど。…それでもどうしても入れたいって言われたら、他の木を減らしてバランスを取るしかないんでしょうね。


中島

そうですね。あとは枝ぶりや大きさを考えて全体的に組み合わせを調整することもあります。ともあれ、一番意識するのは5年後、10年後の庭ですね。だから完成直後は物足りなく感じることもあるかもしれません。

安田

なるほどなぁ。そこをちゃんと理解して貰う必要もありますね。


中島

そうなんですよね。実際、たくさん木を植えた方が完成直後の写真写りはすごくいいわけです。有名な建築家で、すごくたくさん木を植える人もいますしね。ただ、庭というのはいつも写真で見るわけじゃないので。

安田

ああ、確かに。写真と実際にそこに立ったときの庭は、また全然印象が違いそうですしね。


中島

そうなんです。それに、木を植えすぎていると、何年後かには大きくなりすぎてしまったり、雑草でボサボサになってしまったりする。だから私としては、写真映えよりも10年後の暮らしやすさを考えて植栽を調整しています。

安田

なるほどなぁ。生活するのに快適だけど寂しくならないように、ギリギリのラインで計算されていると。

中島

まさに仰るとおりです。1本1本の木にこだわるのもいいんですが、全体の木のバランスと枝ぶりの組み合わせで庭全体の印象は大きく変わりますから。

安田

ああ、そうか。仕入れられる木や大きさって縁みたいなものもありますもんね。今手に入るもので数年後がベストになるようにアレンジするから、例えば「桜を絶対入れろ」なんて言われるとバランスが崩れてくると。

中島

そういうことです。そういうご縁も含めてお任せいただいた方が、将来的に美しい庭になると思います。

安田

長く楽しむための絶妙な引き算があるんでしょうね。大きな木も広い場所に植えられていたらよく見えますけど、いざ自分の庭に植えてみたらイメージと違うなんてこともありそうです。

中島

ええ。実際の庭のスケールに合わなかったり、数年後に大きくなりすぎて邪魔になってしまうことは意外と多いんです。

安田

家づくりでもそうですが、最初の見栄えだけにこだわると後で後悔することって多いですからね。写真には写らない「日々の心地よさ」や「10年後の暮らし」を逆算してデザインするからこそ、中島さんの引き算の庭は長く愛されるんでしょうね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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