第30回 口下手社長のコミュニケーション術

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第30回 口下手社長のコミュニケーション術

安田

前回のお話では、お家を建てる時にハウスメーカーさんのプランがしっくりこず、結局direct nagomiさんに依頼が来るケースがある、というお話を聞きました。


中島

そうですね。「なんとなくイメージと違って…」とご相談いただくことが多いです。

安田

そうですよね。ただね、失礼ながら中島さんもどちらかというと口下手というか……そこまでおしゃべりが達者ではないですよね(笑)。


中島
ええ、それは仰るとおりです(笑)。この対談でもちゃんと喋れているか毎回不安で……
安田

笑。だから、そういうお客さんとどんな風にコミュニケーションされているのか気になって。だってその方は、ハウスメーカーにもイメージを伝えていたわけでしょう? それでもうまく伝わらなかったから、中島さんのところに来たわけで。


中島

そうですね。「次こそちゃんと分かってくれる人に頼みたい」と思いながらやってきたら、こんな口下手な人間が出てくると(笑)。

安田
「ちょっと、この人大丈夫?」ってなっちゃいますよ(笑)。でも結果的には、お客さんのイメージ通り、いやそれ以上のものを作られている。だからどんな風に対応しているのかなと。

中島
そうですね。前回も触れましたが、やっぱりビジュアルでお伝えするようにしています。話すだけじゃなく、しっかり図面を書いてお見せする。図面だけじゃなく、お庭の景観を描いたイメージ画像を用意してしっかりすり合わせるのが大事だと思っています。
安田
視覚的な情報に勝るものはありませんもんね。最近はCGも発達していて、現物に近いリアルな描写ができるようになっているようですし。

中島

仰るとおりです。以前は手描きのスケッチなどで伝えていたんですが、今はCADを使って作成しています。いろんな角度で見ることもできるので。全体像をイメージしていただきやすくなりましたね。

安田

例えば「外から見るとこの木が目隠しになっていて、家の中から見るとこういう風景になりますよ」という感じで。


中島
まさにそういうことです。お庭ってそれ単体で存在するものじゃなく、やっぱり家と一対のものなんです。だからこそ、家とのマッチ具合をお見せしながら提案できると、よりいいなと思いますね。
安田

そうですよね。ちなみに、「まだ施工はお願いできないけど、デザインだけ考えてもらいたい」というお願いもできるんですか?


中島

ああ、はい。デザインだけであれば10万円でお作りできます。もちろんその図面を実際にお庭を作るとなった場合は、その10万円はいただきませんけれど。

安田

ははぁ、なるほど。自分の家の庭にどんな可能性があるのか、図面を描いてもらうだけでも価値があるように感じます。


中島
ええ、お気軽にご相談いただければと思います。
安田
ところで、逆に「家(建物)に合っていない庭」ってどういうものなんですか?

中島

わかりやすいところで言えば、「建物と門柱のスケール感が合っていない」という場合はバランスが悪く見えてしまいます。建物が小ぶりなのに門柱がすごく大きいとか。

安田

ああ、なるほど。逆に平屋でどっしりしたお家なのに門柱がちょこんとしてる、とか。


中島
そうそう。バランスが悪いと、やっぱり全体的にチグハグ感が出てしまいますね。
安田
ちなみに最近は洋風の建築も増えている気がするのですが、その場合はお庭も洋風にするんですか?

中島
基本的にはそうなります。ただ最近は完全に洋風というよりも、どちらでもないシンプルな外観のお家が多いんですよね。建物自体もシャープな印象のものが多いので、お庭にもシャープな線を取り入れていたり。
安田
へぇ。中島さんのキャリアを聞いていると、和風なお庭にこだわっていらっしゃるのかと思いましたが、そんなことはないんですね。

中島

その辺のこだわりは全然ないですね。それよりも「自然な景色を作りたい」という想いの方が強いです。

安田

確かに、以前話に出た治療院さんも洋風な建物でしたけど、すごくしっくりくるお庭でしたよね。全体的に調和がとれていて。

中島

ありがとうございます。建物のデザインに合わせて、曲線を多く取り入れていました。門柱の頭の部分が丸くなっていたり。

安田

なるほど。そう考えると、曲線ってどちらかというと洋風なイメージがありますね。逆に日本庭園は直線的と言うか。

中島

確かにそう言えるかもしれませんね。とはいえ「和風」「洋風」という区分よりも、家の雰囲気や住む方の生活スタイルに合うかどうかに重点をおいてデザインをしています。

安田

確かに中島さんの作る庭を見ていると、そういう感じがします。

中島

ありがとうございます。あとは自然石と樹木の組み合わせで起こる、言わば「図面には書かれない変化」も楽しんでもらいたいですね。自然のものなので、季節などによっていろいろな顔を見せてくれますから。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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