第4回 「芝生を入れたい」と言われても、断ることが多い理由

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第4回 「芝生を入れたい」と言われても、断ることが多い理由

安田
先週は木の選び方についてレクチャーしてもらいましたが、やっぱり中島さんって、5年後10年後の美しさまで考えて庭づくりをされるんですね。

中島
やっぱり長く使っていただきたいので、当然考えますね。
安田
でもお話聞いていて、そういう視点が本当に大切だなと思ったんです。例えばコンクリづくりの駐車場って、完成したときが一番キレイじゃないですか。それ以降はどんどんくたびれて汚くなっていくわけで。

中島
そうですね。どうしても人工物はそういう側面があります。
安田
でも中島さんは、木を植えたり自然石を置いたりすることで、今よりも来年、来年より再来年と、美しさが増していくようなお庭を作っている感じがするんです。

中島
ありがとうございます。そこはすごく意識している部分ですね。
安田
でもその結果、場合によっては施主さんの要望をお断りしたりしてますよね。「芝生を入れたい」って言われても、簡単にはうんと言わなかったり(笑)。

中島
芝生は、やっぱりすごくすごく大変なので(笑)。ちゃんと水を撒かないといけないし、芝刈りもしないといけない。
安田
草取りもしなきゃいけませんしね。それでいうと苔も大変みたいですね。私、「苔に生えた雑草はピンセットで抜かないといけない」なんて話を聞いたことがありますよ。

中島
それは本当なんです(笑)。私もお客様にそう伝えさせていただいています。とにかく芝生にしろ苔にしろ、思っている以上にメンテナンスは大変なんですよね。
安田
つまり、当然いじわるで施主さんの要望を断るってことじゃなく、庭のプロの目から見たときに、「それはやめておいた方がいいよ」ってことを伝えているわけですよね。

中島
もちろんです。ともあれ僕自身、建物の未来の姿をちゃんと想像できるようになったのは、ここ10年くらいのものなんですけどね。毎日庭を見ていてやっとわかるようになったことなので、施主さんにそのレベルは求められません。
安田
施主さんは素人だから、プロがしっかり導いてあげないと危険ってことですよね。

中島
ええ。ですから施主さんのご要望はしっかりお聞きした上で、私の最適だと思うものを提案させていただいています。「これなら3年後5年後にも心地よくて、メンテナンスの手間もかからず喜んでもらえるだろう」っていう未来から逆算して。
安田
なるほどなぁ。ちなみに中島さんがデザインを考える時、一番意識するのはどういう部分ですか?

中島
デザインというと、なんとなく「何かを目立たせる」ことを考えがちですが、私は逆に、何か1つが目立ちすぎないように、全体のバランスを重視しますね。
安田
ははぁ、なるほど。

中島
何かが変に目立つこともなく、家も庭も門も、そして駐車場も含めた全体が、自然に調和していること。そして何より、住む方の生活動線が10年くらいの単位でイメージできているか。ここが何より大事な気がしますね。
安田
それはやっぱり、素人ではわからない部分ですよね。

中島
そうですね。なかなか難しいと思います。
安田
とはいえ、最近の家づくりって、とにかく「手間がかからず便利」であることを重視しているように思えるんですよね。家を建てて駐車場作って、あとは砂利をまいて終わり、というような。

中島
そうかもしれませんね。
安田
でもそれじゃもったいないよってことですよね。もう少し味わいのある家づくりをしましょうよと。

中島
私はそういう生活をご提案したいなと思っています。四季のある家、変化を楽しめる家、というか。
安田
こうして話を聞いていると、中島さんがつくっているのは「庭」というより「家」という感じがします。建物そのものはつくらないけど、建物のまわりにある「家」を作っている、というような。

中島
ああ、そうなのかもしれませんね。
安田
そう考えると、やっぱり中島さんは「庭師」でも「外構屋さん」でもない、何か特別な存在なんでしょうね。

中島
そうですかね(笑)。ありがとうございます。
安田

「家に着せる衣服の仕立屋さん」というコンセプトと同時に、「ガーメントデザイナー」という名前もつけてもらったと聞きました。


中島
そうなんです。ホームページにも書かせていただいているんですが、まさに私の言いたい内容で。
安田
すごくしっくり来ますよ。家の延長としてのデザイン、家の装いのデザイナーさんという感じです。

中島
ありがとうございます。私自身、もっと「ガーメントデザイナーです」って名乗っていった方がいいのかなあ(笑)。
安田
ぜひ名乗ってください。それで「ガーメントデザイナーって何ですか?」と聞かれたら、私にお話してくれたような長いストーリーをじっくり伝えると(笑)。

中島
わかりました(笑)。
安田
でも、よく考えてみれば、家や駐車場ができた状態で中島さんに相談するより、家を作る前に相談した方がいいような気もしますね。実際どうなんですか?

中島
そうですねぇ。確かにその方が、より心地よい暮らしの提案ができるかもしれません。
安田
そうですよね。でも、「家を建てよう!」となって、いきなり庭のことを考える人って、あまりいないでしょうね。

中島
そうでしょうね。とはいえ、「庭について最初に考えましょう」と言いたいわけでもなくて。私たちはあくまで、家の暮らしを中心にした提案をしたいと思っているので。
安田
確かに。ということは、建築屋さんと一緒に打ち合わせに参加するような形がいいんですかね。

中島
ああ、それはすごくいいと思いますね。
安田
ですよね。この対談を読んで興味を持ってくださった方も、ぜひ早いタイミングで中島さんにご相談してみてください。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから