この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
安田
先日家族で沖縄の竹富島に行ったんです。「ちゅらさん」というドラマの舞台にもなったところなんですけど、そこで見た野面積みの石垣がすごく印象的で。これは中島さんにお話しなければと(笑)。
中島
ありがとうございます(笑)。昔ながらの民家が残っている地域ですよね。
安田
そうそう。町中の民家が同じような石垣で囲まれていて、壮観なんですよ。野面積みの石垣なんてお城でしか見たことなかったんですけど、民家でも作れるのかとすごく驚いて。
中島
確かに石垣は、手間がかかるぶん費用も高くなるので、一般的なお家に作ることはほとんどないですね。ブロックを積んでモルタルを塗る、ということが多いと思います。
安田
そうですよね。竹富島の石垣は、石灰岩になる手前ぐらいのサンゴが使われてるんですけど、職人さんが一つ一つ形を見極めて積んでいるらしくて。セメントも使わずにすごくきれいに積まれてるんです。
中島
ああ、竹富島はサンゴ礁が隆起してできた島ですから、サンゴ石灰岩が豊富に採れるんでしょうね。
安田
なるほど。だからあんなにたくさん使われてるんですね。ところで石灰岩ってすごく軽いんですよね。沖縄って台風がよく来ますけど、強風で飛んでいったりしないものですかね。
中島
隙間を作ることで、風の力を和らげることができるんです。水はけもいいですしね。ちなみに沖縄では花ブロックという透かし模様の入ったブロックもよく使われるんですが、それも台風には強いみたいですね。
安田
ははぁ、なるほど。台風の多い地域だからこそ、強風や雨に強い材料が使われているのかもしれませんね。
中島
そういう面もあると思いますね。一方で、衝撃にはあまり強くないんですよ。そういう意味では、「地震の少ない地域だからこそ培われてきた技術」と言えるのかもしれません。どういう風に積まれているのか、実際に見てみたいですね。
安田
それはぜひ見ていただきたいですね。ちなみに中島さんのようなプロなら、現物を見れば具体的な積み方までわかるものですか?
中島
そうですね、ある程度はわかると思います。
安田
へぇ、さすがですね。じゃあ、材料さえあれば、同じような石垣を他の地域で作ることもできちゃうわけですか?
中島
似たものを作ることはできると思います。ただ、先ほどの話で言えば、本州で作る場合は地震対策をどうするか、を考えなければいけませんね。例えば裏側からコンクリートで補強したり。
安田
ああ、なるほど。その土地に合わせた作り方があるということですね。…ん、でも、各所にあるお城の石垣は、補強がされてないまま残っているものもありませんか?
中島
石同士がしっかりかみ合っているものなら、石の重みである程度の強度は出せると思います。ジブリパークでも使われているんですが、「空積み」という石だけで積む技術もありますし。
安田
へぇ! そんな技術があるんですね。奥が深いなぁ。そういえば自然石を使った野面積みだと、石自体がすごく重いと仰ってましたもんね。それこそ何トンとかの世界で。
中島
安田
それだけ大きければ、ちょっとやそっとの地震ではびくともしないでしょうね。地震対策のためにそういう重い石を多く使うんですか?
中島
というよりは、僕らの地元である岐阜は重い石ばかりで、軽い石がないんです。石灰岩は材料屋さんでちょっと見かけたことがあるという程度で。
安田
そうなんですか! じゃあ中島さんに竹富島風の石垣を作ってもらうとしたら、石灰岩を運ぶところから始めないといけないわけですね(笑)。
中島
まぁそうなりますね(笑)。でもすごく面白そうですし、まずは一度見に行ってみたいと思います。
対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
