第49回 「雑木の庭」ブームの火付け役

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第49回 「雑木の庭」ブームの火付け役

安田

「雑木」という検索ワードでdirect nagomiさんのホームページに辿り着く方が多いとお聞きしました。雑木って、あまり日常で使わないキーワードですよね。


中島

お庭業界特有のワードかもしれませんね。ともあれ、雑木を使ったお庭はわりと長くブームが続いています。雑誌にも「雑木の庭特集」が組まれたりしていますし。

安田

へぇ、そうなんですか。そもそも雑木とはどういうものなんですか?


中島

元々は「木材として使われない広葉樹」の総称でした。ただそれらを敢えて積極的に取り入れるスタイルが流行り始めて、「雑木の庭」がブームになっていった。細かく綺麗に仕立てる日本庭園なんかとは、ある意味真逆にあるものですね。

安田

なるほど。日本庭園のような「仕立てる庭」と、雑木の庭のような「仕立てない庭」があるわけですね。そして最近は「仕立てない庭」の人気が高くなっていると。


中島

そういうことだと思います。「人の手があまり入ってない雰囲気」をご希望される方が多くなっていますね。

安田
ふむふむ。「仕立てる庭」と「仕立てない庭」では、それぞれどんな木を使うんですか?

中島
「仕立てる庭」でよく使うのは、松やマキの木、あとは杉の木などですね。日本庭園でもよく見る京都の北山杉は、1つの株から何本も幹が生えているような独特の形をしているんですけど。
安田
へぇ! おもしろいですね。どうしてそんな形になるんですか?

中島

元々は、急斜面などの厳しい自然環境の中で、杉材を効率よくとるためにできた技法だったんです。それが「形がおもしろい」ということで、お庭にも取り入れられるようになりました。

安田

ははぁ、なるほど。でも、杉材を取るための技法ということは、「木材として活用すること」が想定されていたんじゃないんですか?


中島
庭に植える場合は、あくまで観賞用だと思いますね。幹が曲がったものなんかが好まれている印象です。
安田

ふーむ、なるほど。当初の想定とは違う使われ方で、注目されるようになったわけですね。


中島

そういうことです。あと、「仕立てる庭」では手入れをすることで美しくなる木を使いますが、「仕立てない庭」では、あまり手入れがいらないものを使うことが多いですね。

安田

つまり、手入れが大変な松を「仕立てない庭」で使いたいと言われても難しいと。


中島
そうですね。とはいえ松の中でも、アカマツのように雑木っぽい雰囲気で植えることができるものもあります。剪定などの手入れの手間はどうしてもかかってしまいますが。
安田

へぇ、松にもいろいろあるんですね。ちなみにアカマツって松茸ができる木でしたよね。それをお庭に植えたら、自宅の庭でも松茸が採れるようになるんですか?


中島

絶対に不可能とは言い切れませんが、なかなか難しいでしょうね。森の中と庭とではだいぶ環境が違いますので。

安田

そりゃそうか(笑)。手入れの手間がかかるということは、中島さんはあまり使わないわけですか。

中島

そうですね。なるべく手入れの手間がないように、雑木の中でも伸びが穏やかなものを選ぶようにしています。

安田

なるほどなぁ。ちなみに「雑木の庭」は長らくブームが続いているということでしたけど、いつ頃から注目されるようになったんですか?

中島

注目され始めたのはテレビチャンピオンの「ガーデニング王」からですね。茨城の社長アオダモナツハゼを使った庭を作って、けっこう話題になりまして。

安田

へぇ! その方が広めたといっても過言ではないわけですね。すごいなぁ。そこから雑木の庭が広まって、人気が出てきたと。

中島

ええ。ただ、人気が出たのはよかったんですけど、その分どんどん雑木の値段が上がってしまって。今は当時の10倍くらいまで上がりましたね。

安田

えっ! 雑木がですか? 雑な木なのに……。

中島

そうなんです(笑)。元々はあまり使い道のない木だったところが、「庭に植える」というニーズが高まったことで、価値が上がっていきました。

安田

なるほどなぁ。じゃあもし人気が出る前に「雑木の庭」を作っていれば、かなり安くできたんじゃないですか?

中島

そうですね。とはいえ、その頃はまだ仕立てる庭が一般的でしたから。「雑木の庭」を作るのはかなりの勇気が必要だったかもしれません(笑)。

安田

そうか、「お宅の庭、全然手入れされてないじゃない」みたいな目で見られてしまいそうですもんね(笑)。それが今となっては、主流になってるわけですから、おもしろいものです。

中島

仰るとおりです。値段が上がったとはいえ、まだまだ「仕立てる庭」よりはコストも安く抑えられますし、あまり手もかからないしで、引き続きブームは続くんじゃないでしょうか。

安田

お客さんにとってはいいこと尽くしなわけですね。そして「雑木の庭」が得意な中島さんに依頼が入り続けると(笑)。

中島

ありがたいです(笑)。なるべく手間のかからないお庭を作って、気軽にお庭を楽しんでいただければと思います。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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