庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第66回 空き家を誰かの“住みたい場所”に変える庭リフォーム
実は最近、岐阜県で「空き家ビジネス」を始めたいなと思っていて。友達にも「一緒にやらない?」って声をかけているんですよ。
そうなんですね。確かに岐阜には昔からある家も多いですし、空き家の活用は地域にとってもプラスになると思います。
そうですよね。知り合いに、のうひ葬祭の鈴木さんという方がいるんですが、彼も「空き家ビジネス」を手掛けていて。人が亡くなると空き家が出てきますから、ご遺族のサポートの一環としてやっているんです。
ははぁ、なるほど。素晴らしいですね。
ただ、やっぱり「売れる物件」を仕入れるのは簡単じゃないらしいんです。そこで思ったんですけど、中島さんの「お庭のリフォーム」と組み合わせたら、もっと魅力的な空き家として再生できるんじゃないかと。
いいですね! ぜひやってみたいです。お庭で家の印象もガラッと変わりますからね。庭を整えてあげることで、「住みたくなる場所」に生まれ変わることも多いと思います。
まさにそこを期待しているんです。空き家ってどうしても「駅に近いか」とか「築年数は何年か」みたいな条件で選ばれがちで。それが「お庭が素敵だからここに住みたい」という選ばれ方になったらいいなぁと。
なるほど、すごくいいですね。空き家選びがもっと楽しいものになる気がします。
同感です。ちなみに予算を100万と決めて「この予算内で空き家の庭を好きなようにリフォームしてください」と頼んだら、中島さんならどんな風にしますか?
いきなり現実的な話をして申し訳ないのですが、デザインや雰囲気の前に、まずは駐車場を増やすことを考えますね。田舎の方でも、古い家だと駐車場が1台分しかないこともあるので。
ああ、なるほど。確かに使い勝手も重要ですもんね。じゃあまずは駐車場を確保して、生活の利便性を上げることが先決だと。
そうですね。どれだけ庭が素敵でも、住みづらい家に人は居つきませんから。リフォームをする場合は、そういう現実的な目線も重要だと思いますね。
なるほどなるほど。では、利便性をまずしっかり確保して、その上でさらに魅力を感じてもらうためには、どんなリフォームが必要でしょうか?
またまた現実的な話で恐縮ですが(笑)、管理の手間をなるべく減らすことが大事ですね。木の数を減らしたり、手間のかからない木に植え替えたり。昔のお庭は全体的に木が多い上に、管理に手間がかかる樹種が植えられていることも多いんです。
ああ、確かに。空き家のお庭って、木々が茂りすぎてお化け屋敷みたいになってるところもありますもんね(笑)。あれは空き家になって放置されているからというだけでなく、そもそも手入れが必要な木の場合も多いと。ちなみに木を減らすというと、ひっこ抜いたりするんですか?
そうですね。とはいえ幹が太いものはそのまま抜くのは難しいので、少しずつ上から枝を切り落として、最後に重機で根を引き抜いたりします。
へぇ、けっこう大がかりなんですね。
そこまで大きくなければ、薬で枯らせることもあります。その上で、防草シートを敷いてさらに砂利を撒けば、雑草の発生をかなり抑えられるので、管理はかなり楽になると思いますよ。
ははぁ、なるほど。direct nagomiさんの施工事例でも玉砂利と石を組み合わせているのをよく見ます。雰囲気もおしゃれですよね。
そうなんです。手間がかからず、かつ眺めていても楽しいお庭になります。15~30センチくらいの石や背の低い植物を組み合わせたりしてもいいと思いますね。
そんなお庭が付いていたら、空き家も魅力的に見えるだろうなぁ。ちなみに砂利はどんな石を使うんですか?
2~3センチくらいの大きさで、色は建物に合わせて選んでいます。茶色やグレー、白が比較的安価で一般的です。
建物に合わせて選んでもらえるんですね。確かにその方が全体がまとまった印象になりそうです。お客さんが自分で選べるようにしても楽しそう。
ああ、それはいいですね。他にも色が混ざったタイプもあったりするので、楽しみながら選んでいただけると思います。
砂利一つとっても、いろんな種類があるんですねぇ。なんだかどんどん楽しみになってきました(笑)。「空き家ビジネス」を始めるときは、ぜひ中島さんにお力をお借りできればと思います。
ありがとうございます。できる限りお手伝いさせていただきます。空き家がまた誰かに住んでもらえる場所になるお手伝いができれば、私たちもすごく嬉しいので。
そう言っていただけると心強いです。実現に向けて、またいろいろ相談させてください。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。