第111回 中辻麗が車のセールスに挑戦したら…?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第111回 中辻麗が車のセールスに挑戦したら…?

安田

この対談でも何度も話題に上がっていますが、中辻さんって車がお好きですよね?


中辻

好きですね。特にメルセデスが大好きです。

安田

それでね、もし中辻さんが車のセールスをやったとしたら、絶対No.1セールスマンを目指すと思うんですけど(笑)。その時にどんな作戦を考えるのかなっていうことに非常に興味がありまして…。


中辻

えー…どうやろなぁ…。たぶん今の仕事に対する姿勢とあんまり変わらないと思いますね。お客さんのことを考えて、お客さんを幸せにするような売り方をするんじゃないかな。

安田

多くの人は「いいものをできるだけ安く売れば、お客さんはハッピーになる」と考えがちだと思うんです。でも前回もバッグの話が出ましたけど、中辻さんのように値段は関係なく「買うことでハッピー」という人もいるじゃないですか。そうすると、なるべく高い商品を売る方がトップセールスになる近道なのかなとも思うんですが、そのあたりどうでしょう?


中辻

そうですねぇ。車って趣味嗜好に大きく左右される買い物だと思うんですよ。だから「お客さんが車に対して何を求めているのか」を瞬時にしっかり汲み取って、さらにプラスアルファの提案までできるのが、本当のトップセールスなのかなと思います。

安田

ほう。ということは、ただ単に高い車にオプションをいろいろつけて売るだけでは、本当の意味でのトップセールスにはなれないと?


中辻

なれないと思いますね。優秀なセールスって、こちらの要望に対して即レスポンスしてくれる。そして何より「あなたが1番ですよ」という特別感を出しながら提案してくるんです。

安田

そういうセールスに会ったことあります?


中辻

ありますあります。ウチの社用車はトヨタなんですけど、トヨペットのセールスの子がまさにそういうタイプでした。彼から最初に社用車を買った時もすごく対応が良かったんですけど、2回目の購入時の対応が、神がかっていて。

安田

中辻さんにそこまで言わせるなんて、相当いい対応だったんですね!


中辻

そうなんですよ。実は初回で買った社用車が燃費が悪かったんですよ。それでセールスの彼に、ちょっとした相談ベースで「今の社用車より燃費が良くて、積載量が同じくらいの車種ってなにかあるんかなぁ?」って言ってみたんです。ほんの雑談程度で。

安田

ほうほう。それでそのセールスはどう動きました?


中辻

その話をした15分後に、今使っている社用車の上位互換の車を提案しにきました(笑)。

安田

15分後?!


中辻

そうなんですよ(笑)。しかも、元の社用車の支払い残高がどれくらいあって、新しい車種に乗り換えたらその支払いがどう変わるのか、っていう資料も全部揃えていて。それでいて車のスペックに関する説明は、何の資料も見ずに、堂々とプレゼンしてくるわけです。

安田

は〜、そこまでされたら社用車を買い替えるしかなくなりますね(笑)。


中辻

ですよね(笑)。しかも彼のすごいところが、「中辻さん専用の見積もりです!」って、あらかじめ20万円くらい値引きが入った書類を持ってくるんですけど、あえて金額に端数を入れてくるんです。

安田

え、どういうことですか?


中辻

私は車を買う時にめっちゃ値切るんですね(笑)。例えば305万円だったら「この5万は、いらんよね?」って言って、300万円にしてもらう。で、その彼はわざと305万円の状態で見積もりを持ってくるんです。

安田

それは中辻さんにあえて5万円分を値切らせるために、ですか?


中辻

そうなんですよ(笑)。しかも私にそれを言わせた後に、「いや〜…新型車なんでこれが限界で…。でも中辻さんは特別なんで、ちょっと上司に聞いてみます!」って言うわけです。

安田

ははぁ…ここぞとばかりに「特別感」のアピールをしてくるわけか(笑)。


中辻

そうそう(笑)。「中辻さんのために、自分、頑張ってます!」っていうアピールをしながら、この一連の流れを全く嫌味のかけらも感じさせずにやってくれるんです。

安田

なるほど。それは確かにいいセールスマンですね。


中辻

そもそも彼も、私のことをよくわかっているので「300万円だったら中辻さんは買う」ってわかっているんですよ。でも私に「5万、いらんよね」を言わせて、「中辻さんのために上司にかけあってみます!」と返す茶番を挟むことで、私も気持ちよく買い物ができるというわけです。前回の対談でも言いましたけど、やっぱり私、自分を特別扱いしてもらうのが好きなんです(笑)。

安田

笑。というか中辻さん、車は値切って買うとのことでしたけど、そもそも自分の会社では絶対値引きしないじゃないですか。メルセデスのセールスになったとしても、絶対値引きゼロで売りそうな気がします(笑)。


中辻

いやぁ…そこは値引きすると思いますね。だって車業界って、ある程度「値引きありきな世界」だと思いません?

安田

確かに。値引きすることを前提で価格が付けられていますよね。


中辻

ですよね? だから値引き交渉もクロージングの1つの楽しみだと言えるのかなと。だから私がもしメルセデスのセールスをするとしたら、「あなたは特別なので…」という演出のためにも、値引きはすると思いますよ。

安田

なるほどなぁ。ポスティングは「値引きは売るための本質ではない」けれど、車のセールスだとお客様の満足度アップには値引きも必要だと思っているわけか。そこが面白いですね。


中辻

ポスティングに関しては、値引くことで配布スタッフさんにしわ寄せがいってしまうじゃないですか。だから値引きはしない。でも自分1人で配布しているんだったら、たぶん多少の値引きはしちゃうかもしれないです(笑)。

安田

なるほど(笑)。いやぁ〜、中辻さんがメルセデスでトップセールスになっていく姿も、ぜひ見てみたいですね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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