「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第59回 失うものが少ないことが、高い決断力の秘密
今回は、中辻さんの「行動力の源」について迫りたいと思います。
え、行動力ですか? 私、自分ではそんなに行動力ある方だと思っていないんですけど(笑)。
何をおっしゃいますか(笑)。今回のベニエ屋さんオープンを始め、中辻さんは自分で決めたことに対する行動がかなり早いじゃないですか。普通は「こうしたほうがいい」とわかっていても、失敗を恐れて動けない人がほとんどなのに。
うーん、そうなんですかね(笑)。
この対談でも過去の話をいろいろお聞きしてきましたが、どれも「自分で決断・すぐに行動」で(笑)。しかも後悔はなし、という感じですよね。どうやったら中辻さんのような行動力を身につけられるのか教えていただきたくて。
確かに(笑)。久保さんと比べてしまうと、大半の人は行動力がないことになってしまいそうです。
笑。まあでも久保さんの行動力をいつも間近で見ていることもあるのか、「一度やると決めたら絶対にやる」ということは、自分の中でも常に心がけていることではありますね。
なるほど。とはいえそういう覚悟ってなかなか難しいものですけどね。
うーん。それはたぶん、自分が決断したことで盛大に失敗したことがないからかもしれないですね。あとから振り返った時に「あぁ、この決断は辞めといたほうが良かったかもなぁ」って思うことないですもん。
それって、うまくいった記憶しか残っていないだけではなくて?(笑) だって普通だったら「妊娠して結婚してみたら、旦那に借金がありました」っていう状況なら「自分が下した決断が間違っていたな」って思うと思うんですけど(笑)。
あはは! そういう風には全く思ってなかったですけど本当ですね(笑)。でも私もちゃんと頭の中では入念なシミュレーションをしていますよ?
ほう。例えば?
今だとベニエ屋さんのことについて、「どういう風に集客しようかな」「月の経費はこれくらいに収めよう」「1日にお客さんが何組来店すれば黒字になるかな」とか。そういうのはすごく考えています。
じゃあ最初の結婚をする時も、ちゃんとシミュレーションしました? 「もしこの彼氏に借金があったら、何日くらいで見切りをつけよう」とかって(笑)。
えっと…それは全然想定していませんでした(笑)。
笑。すみません、ちょっと意地悪なことを言ってしまいました(笑)。でも先ほどのお話だと、ビジネスについては最悪な事態まで考えた上で、いろんな角度からシミュレーションしているってことなんですね。
そうですね。ビジネスのことに関しては、ズバズバと決断しているように見えて、頭の中ではぐるぐる考えてばかりだし、不安もいっぱいありますよ。
なるほどなるほど。では人生においてはどうですか? ビジネスと同じように「最悪の事態」になった場合のことも、一応は考えているわけですか。
どうかなぁ。いつも「まあなんとかなるやろ〜」って感じかもしれない(笑)。別にそれは投げやりな意味ではなくて。私、若い時に散々いろんなことを経験しましたけど、結局のところ大切な娘と健康な体があればなんとなるかなって思い続けてきたんですよね。
つまり多少のことが起ころうとも、人生が終わってしまうような失敗なんてない、と思っていたわけですか。
そうそう。というか皆さんきっと多くを求めすぎているんじゃないですかね。「失ったらどうしよう」と思っているモノが多すぎるのかも。だって私はある意味、「健康な体」と「大事な娘」しか大切なモノがない。
それさえあれば、十分だと。だからたとえ「しんどいこと」があったとしても、それは別に「失敗」だとは思わないわけですね。
仰るとおりです。私もお金がなくてどうしようもない時期もありましたけど、結局は何回もやり直してうまくやってこれたので。ある意味、失ったら困るものがほとんどないからこそ、すぐに行動に移せるのかもしれないですね。
なるほどなぁ。それでも以前の旦那さんに借金があるとわかった時は、さすがに「この人と結婚したの、失敗だった」とは思いませんでした?
思わなかったですね。娘も生まれる直前でしたし、何よりも私が自分でこの人と一緒に歩んでいくと決めて結婚したわけなので。だから借金があるってわかっても「2人で返していけばええやん」って思ってました。
すごいですね(笑)。じゃあ旦那さんの借金を肩代わりすることになったとしても、2人で頑張って返済していければ、中辻さんにとってみれば、それはそれで「成功した人生」だったわけですね。
そうですね。私の中ではアフィリエイトで稼いだ分とかも充てれば、5年くらいで完済できるなってところまで思い描いていて。
ふむふむ。すぐに借金返済のための行動に移したわけですね。
そう。もっとも、旦那側に全く借金返済の意思がなかったのは誤算だったんですけど(笑)。
笑。確か以前に、すぐに無断で会社を辞めてきたり、新たな借金を作ったりしていたって言っていましたよね。
ええ(笑)。だから私としては、旦那のそういう非協力的な態度に愛想をつかして、見切りをつけた形ですね(笑)。
なるほど。で、それ以降の旦那の人生は知らないけど、私はその後も常に成功しているぞ、ってことですね。
そうなりますかね(笑)。
その旦那さんも中辻さんといれば一緒に成功の道を進めたかもしれないのに(笑)。というか今のお話を聞いていて、私はヒラリー・クリントンの話を思い出したんですけど。
へぇ、どういうお話ですか?
ヒラリーさんの昔の恋人ってガソリンスタンドで働いていたんですって。で、ある時、夫であるクリントン大統領が「きみがあの男と結婚していたら、今頃きみはガソリンスタンドの従業員の奥さんだったんだな」って言ったと。
えー。それでヒラリーさんはなんて返したんです?
「あの人と私が結婚していたら、あなたでなくあの人が大統領になっていたわ」って(笑)。
うわ〜カッコいい〜!(笑)
「私といれば成功できる」という感じが、まさに中辻さんの生き方にリンクするなぁと思いました(笑)。
ふふふ。きっとそれくらいの気持ちで生きていた方が、変に失敗を恐れることなく、楽に生きられるんじゃないかなと思っています(笑)。
なるほどなぁ。中辻さんって私が思っていたよりもずっとポジティブな考え方をされている人だということがよくわかりました。きっとそういう「ポジティブ」さがベースにあるから、軽やかに「決断」をすることができるんでしょうね。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。