第78回 仕事を断る勇気があれば、プレッシャーからも解放される

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第78回 仕事を断る勇気があれば、プレッシャーからも解放される

安田

「ポスティング」ってわりとダイレクトに「目に見える成果」を求められる仕事だと思っていて。「本当に成果が出るんですか?」とか「チラシをまいたのに全然人が来ないじゃないか」なんてよく言われると思うんです。


中辻

そうですねぇ。そういう意味では「納品して終わり」というお仕事とはちょっと違うかもしれません。

安田

それってかなりのストレスやプレッシャーだと思うんですが、中辻さんはそういうものとどう向き合っているのか教えていただけますか?


中辻

うーん、プレッシャーは『日本ポスティングセンター』を始めて2〜3年目くらいで感じなくなっちゃいました(笑)。今は大きい仕事とか絶対にコケられない仕事がくると、「やってやろうじゃないか!」って考えることの方が多いですね。

安田

へぇ、すごいですね。どうやったらプレッシャーを感じないようになれるんでしょう?


中辻

自分が「これは結果が出ない」と思うお仕事は、最初から引き受けないようにすればいいんですよ。

安田

仕事を断るってことですか?


中辻

はい。よく「経営者はNOと言うな」みたいに言いますけど、私は2〜3年目の頃からすでに「できないものはできない」ってしっかり断るようにしています。だって広告費に見合った結果を出せないなんて、絶対にあってはいけないことだと思っているので。

安田

無理して引き受けても、何の反響もなければクレームになりますもんね。


中辻

それもありますけど、やっぱり一番は「お客様の貴重な広告費を無駄にしてはいけない」という思いが強いので。だからかなりズバズバと「これはポスティングでは効果が出ないと思います」って言っちゃってます(笑)。

安田

なるほどなぁ。でも「ここに頼んだらなんとかしてくれるはず」って思って問い合わせてくるお客さんもたくさんいると思うんですよね。『日本ポスティングセンター』さんのような、知名度も評判も高い会社さんだったら尚更。


中辻

確かに、私たちのことを「魔法使い」かなにかのように思っているお客様もいらっしゃいますね(笑)。

安田

笑。「あの会社に頼めば、不可能を可能にしてくれるらしいぞ」って?(笑)。


中辻

そうそう(笑)。でも繰り返しになりますが、どう考えても難しいものについては安請け合いはせずにお断りしますね。

安田

ちなみに断ったあとってどうするんです? 中辻さんだったら「断って終わり」ということはなさそうですが…(笑)。


中辻

別の解決法を提示するようにはしていますね。それがプロの仕事だと思っているので…。

安田

素晴らしい! それにしてもどうして「NO」と言えるようになったんでしょう。だって断ってしまったら儲けが減るじゃないですか。始めて2〜3年の頃だったら、依頼された仕事は全部やらないと売上が…とは思いませんでした?


中辻

もともとは私も「客さんがやりたいって言ってるし、なんとかしてやらなアカンな」というような「受けの姿勢」で仕事をしていたんです。「こんなのチラシで売っても反響出ないやろ…」と思ったとしても、自分の意見は飲み込んで、お客さんの「やってみたい」に応えていた、というか。

安田

正直なところ、言われたとおりにやる方が簡単ですもんね。


中辻

ええ。それで効果が出なくても「私のせいじゃないし」と言い訳もできますし。でもやっぱりお客さんからは、「効果が出なくてがっかりした」とか「期待してたんだけどな」なんて言われてしまって…。

安田

お客さんの言うとおりにやったのに、結果が出ないと文句を言われちゃうわけですね(笑)。


中辻

そうなんですよ(笑)。でも時間が経つにつれ、自分の中に「ポスティングで集客するためのノウハウ」が蓄積されるし、実績も増えていきますよね。そうすると自分の知識に自信が持てるようになってきたんです。

安田

ふむふむ。そこでようやく「自信に裏付けされた発言」ができるようになったと。それが中辻さんの場合、会社設立から2〜3年目の頃だったわけですね。


中辻

仰るとおりです。自分の感覚を信じて、「これは効果が出ないので、ウチでは引き受けられません」と言うようになったし、お客様が満足する結果を得られるために「こういう広告の出し方はどうですか?」と提案するスタンスに変えていきました。

安田

なるほどなるほど。中辻さんはそうやって不必要なストレスやプレッシャーを減らしていったわけですね。ちなみに「受けの姿勢」で仕事をしていた頃は、お客さんから不満をぶつけられて「自分はダメな人間だな…」と落ち込むこともあったんですか?


中辻

ないですないです(笑)。どちらかというと「私がアカンな、と思ったことはやっぱりあかんかった。じゃあちゃんと断る勇気をつけるべきだな」と思っていましたね。

安田

そうかぁ、やっぱりさすが中辻さん、ポジティブですねぇ。普通だったら「もう私はこの仕事に向いてないんだ…」と思っちゃいますよ(笑)。中辻さんが感じるプレッシャーの種類って、一般的な経営者や社会人が感じているものとは全く違うのかもしれないですね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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