第7回 わずか5万部で反響140件

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第7回 わずか5万部で反響140件

安田

世の経営者も「人への投資が大切」「成果が最も大事」と理屈ではわかっているはずなのに、どうしても目先の安売りに走ってしまいがちなんですよね。


中辻

そうなんですかねえ。

安田

本当は社員のために高く売るべきなのにそれができていない。ところが中辻さんは、まだ経営を始めたばかりの頃からそれを実行していたわけで。やっぱり経営センスが良いんでしょうね。


中辻

ありがとうございます。でも、当初は風当たりが強かったことも事実です。一方で、私たちの「志」に共感して依頼してくださるお客様も当然いらっしゃって。

安田

ちゃんと分かってくれる人もいたわけですね。


中辻

はい。例えば初期の頃にウチに依頼してくださったお客様。不用品回収系の会社さんだったんですが、配布枚数は1/4になったのに、反響は10倍以上になったんですよ。

安田

え、どういうことですか?!


中辻

もともとは、配布単価2円✕20万枚で毎月40万円ほどの配布費用をかけられていたんですよね。で、ウチでは配布単価8円で受けたので5万枚しか撒けなかったんです。

安田

配布費用はこれまで同様の40万円しか出せないと。


中辻

そうです。そしたら初月に、その5万部だけで約140件の問い合わせがあったんです。それまでは20万枚で10件程度だったのに。

安田

10件でもすごいのに、140件?!


中辻

そうなんですよ。そのときにその会社の代表に言われたんです。「最初は、こんな高いポスティングは聞いたことないって周りに大反対された。でも結果は配布枚数が1/4で反響が10倍以上。これが質の高いポスティングってことだよね?」って。

安田

それは嬉しいですよねえ。自分のやっていることは間違っていなかった!って思いませんでした?


中辻

はい、本当に。質の高いチラシと質の高いエリア選定が揃えば、少ない枚数でも反響があるし、費用対効果も上がる。これがホントのポスティングだー!って確信できました。

安田

なるほど。これが適正価格なんだと中辻さんは自信を持っているわけですね。


中辻

そうです、これが適正価格です。

安田

じゃあなぜ、わざわざ「日本一高い」って名乗っているんですか?


中辻

そうですねえ……理由がなくて高い、とは思われたくないからですかね。高いのにはちゃんと理由があるので。

安田

かけた費用に対して最終的にどれだけ効果があったのかというのが大事だぞ、と。


中辻

はい。私たちはお客様から「広告費」という、会社にとってできれば捻出したくない費用をお預かりしてお仕事をさせていただいているんです。だから効果がなければ、その広告費がたとえ1万円であったとしても失敗なんです。

安田

なるほど。


中辻

だから私たちがなぜこの価格設定にしているのかを理解した上で利用してもらいたいんです。それはつまり、「とりあえず安いところを探しているお客様」をターゲットから外したいという意図もありますね。

安田

いやあ、素晴らしいですね。「日本一高い」と言ってしまうことで、「質が良いなら高くても納得して払います」っていう人は見つけやすいし、響きやすいですもん。なんで経営者はそう言わないんでしょうね?そうすべきだと私は思うんですけど。


中辻

(笑)。まあ最近は、ウチのこういうブランディングのようなものが周知されてきたこともあって、「1枚最安値いくらで配ってくれますか?」みたいな問い合わせはなくなりましたね。

安田

最初から「高い」って言ってますからね(笑)。


中辻

そうなんです。でも、逆にウチからお断りすることもあるんですよ。

安田

え?どういうことですか?


中辻

たとえば飲食店さん。客単価が低めの業種ですし、反響も取りやすいんです。チラシの質が良くて、写真のクオリティが高ければ、それほど戦略を練らなくても反響が取れる。

安田

そういう会社には、ウチじゃなくてもいいよ、と言うわけですか。


中辻

そうです。もちろん我々に任せていただければ間違いないですが。でもお客様にとっては「日本一高い」ウチに任せることでトータルの利益が減ってしまうことになりますし。

安田

お客様にとっての費用対効果を考えると、ってことですね。


中辻

はい。これはお客様にあまり旨味がないなあと思ったら、正直に「ウチじゃなくてもいいと思いますよ」って伝えて、他のポスティング会社さんをご紹介しています(笑)。

安田

「安かろう悪かろう」の会社を紹介しちゃうわけですか?


中辻

いえいえ(笑)。そんなに安くはないけど、一生懸命やってくれるところもあるんですよ。ウチのようなマーケティング要素はないけれど、ちゃんとGPSを入れて配っている会社さん。

安田

そういう横のつながりもあるんですね。


中辻

私のセミナーを聞きに来てくれた会社さんとかですね。なので「この会社だったら、リアルタイムGPSも入っているし、ちゃんと配布はしてくれますよ」と紹介することも全然あります。

安田

そんなこと言っちゃって、驚かれませんか?(笑)


中辻

驚かれますね(笑)。「そんなこと言っていいんですか?!」とか言われますけど「全然大丈夫です〜」って言ってます。

安田

すごいですねえ。


中辻

そうやって1回やってみて、それでもうまくいかなくて、しっかりお金をかけて戦略から一緒に練りたい、と思ったらまた電話してくださいね〜って言うんです。

安田

また電話かかってくることあります?


中辻

はい(笑)。結局、後日また電話がかかってきて、最終的にはご依頼を受けることのほうが多いです。

安田

なるほどねえ。「日本一高い」というブランディングが引き寄せる「成功の鍵」のようなものがわかってきました。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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