「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第39回 嫌われる社長と、嫌われない社長
西崎さんって、「ブラックな社長」って名乗っている割に、実際会ってみるとものすごくちゃんとしてるじゃないですか。
まぁ「ブラック企業」という意味の「ブラック」ではないので(笑)。でも、振る舞いには気をつけている方だと思いますね。
そんな西崎さんに聞きたいんですけど、一般的に「まっとうな社長」って社員に好かれないんじゃないかと思っていて(笑)。
え、どうしてですか?(笑)
「まっとう」の定義によるんでしょうけど、私がイメージしているのは「まともなことばかり言う社長」って感じですかね。
まともなことばかり言う社長なら、僕の感覚だと好かれる気がしますけど…。
そうですかねぇ。正論ばかりだと肩が凝りませんか。それに、そういう社長は社員が何か間違ったことをしたらちゃんと叱るわけですよ。確かに理屈は正しいんだけど、社員の側は「正論ばかりいいやがって」とムカついたりする。
ああ、うーん、明らかに理不尽なことで怒る社長とか、言ってることとやってることが違う社長とかが嫌われるのはわかりますけど、今の話は単なる逆恨みなのでは…。
そうなんですけど、人間って勝手なものですから、「まともなことばかり言う社長」は嫌になっちゃうんです。逆に言えば、感情じゃなく理性的に受け止めてくれる社員さんって想像以上に少ない。仮に相手が正しかろうが、どうしても会社のせい、社長のせい、あるいは社会とか国のせいにしてしまう。
うーん、そうですかねぇ。
まぁ、これは私個人の感覚というか、体感なんですけどね(笑)。そうだな、例えば「就職氷河期」と呼ばれた時代がありましたよね。
ああ、僕も2005年卒なのでその世代です。
ああ、であれば想像しやすいと思うんですけど、やっぱりあの時期って、データで振り返っても厳しい時代だったわけじゃないですか。他の時代に比べて明らかに就職のハードルが高かった。
そうでしょうね。楽ではなかったですよね。
そうそう。でもね、同じ時代の貧しい発展途上国とか、紛争地域に生まれた子に比べたらずっと幸せだとも言える。「確かに君たちは大変だったかもしれないが、世の中にはもっと大変な人もいるんだ。だから前向きに頑張ろうじゃないか」…どうです? これって「まっとうな意見」に聞こえませんか。
うーん、確かに、ポジティブではありますよね(笑)。
笑。でもね、これを就職氷河期の学生に言ったら絶対に嫌われますよ。お前の時は氷河期じゃなかったからそんなこと言えるんだと。
ああ、なんとなく安田さんが仰る意味がわかってきました(笑)。ただそれ、社長がまっとうかどうかとか、社員が感情的か理性的かという話じゃなくて、単にマッチングの話じゃないですかね。
ん? どういうことです?
つまり、そういう”ポジティブ”な意見が刺さる人もいると思うんです。そうだその通りだ、だから頑張ろうって思える人もいる。だから、最初からそういう人を採用して組織づくりをすればいいだけなんです。そうすれば社長が嫌われることはないわけで。
ああ、なるほどなぁ。確かにそうかもしれませんね。
そのあたりのマッチングがうまくいってないから、社長の言葉が響かないし、嫌われたりしちゃう。逆に言えば、自分の言葉が刺さらない人しか採用できていない、それ自体が課題なのではと。
ターゲットに合った人をちゃんと採用しなさいよということですね。「まっとうな話」で引っ張っていきたいなら、それを理解できる社員を集めないといけない。
そうそう。もっとも、採用ってそんなシンプルなものでもないので、口で言うほど簡単ではないですけどね。ただ、そのあたりを意識して採用手法を工夫していく努力は必要だと思うんです。
確かに確かに。ちなみにこれ、会社じゃなくて国だったらどうです?
国ですか。うーん、なるほど。社員じゃなくて国民だってことですね。
ええ。割合で言ったら、「自分で国をなんとかするぞ」って人より、「国にいろいろやってもらいたい」って人の方が圧倒的に多そうですよね。そこでさっきみたいな「日本に生まれただけでお前らはものすごく幸せなんだ」なんて言ったら一発で嫌われますよ(笑)。
嫌われるかはさておき、選挙では負けちゃいそうですね(笑)。
そうそう。「年寄りの方がお金持っているんだから、医療費は全額負担にしましょう」なんて言ったら大変なことになるわけですよ(笑)。こういう場合はどうするのがいいと思います?
いやぁ、どうなんでしょうね。恥ずかしながら僕、政治に疎くて。
むしろそういう人の意見を聞きたいです。好きに国を変えられるとしたら、どうしますか。
うーん、それでいうと、若い人材をもっと政治の場に入れていった方がいいと思いますね。今って政治家の平均年齢がものすごく高いでしょう? これを変えて、20代から何人、30代から何人、40代から何人みたいに枠数を決めちゃうとか。
ははぁ、なるほどね。お爺ちゃんばっかじゃうまくいってないから。
もちろんベテランの知見も大切だとは思うんです。これまでの経験をお持ちなわけだから。ただそれだと若者たちが政治を「自分ごと」だと思えない気がして。
なるほどなるほど。それを仕組み的にガラッと変えたら、きっと政治のあり方も変わってくると。私もせめて「70歳で定年」とかにしてほしいなぁと思いますよ。
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。