第4回 「社員思いの社長」の本当の姿

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第4回 「社員思いの社長」の本当の姿

安田

私はワイキューブ時代、「世界で一番いい会社」を目指してたんです。それこそアマゾン奥地の原住民に聞いても「一番いい会社はワイキューブだ」と言われるようにしたかった。


西崎

なるほど(笑)。それはすごい目標ですね。

安田

でも、「世界で一番いい会社」になるには、当然すごくたくさんの人に「いい会社だね」と思われなければならい。つまり必然的に、最大公約数的な魅力を打ち出すしかなくなってくるわけですよ。


西崎

ああ、「給料が高い」とか「休みが多い」というような、誰にとっても魅力だとわかる部分をアピールすることになると。

安田

仰るとおりです。結果、だんだんと「どこにでもある普通の会社」に近づいていってしまう。そう考えると、100人いて100人が「いい会社」と言う会社って、別にいい会社じゃないんじゃないか、という風にも思えるわけですよ。


西崎

まったく同感ですね。すべての人に受ける会社を目指しても意味がないと思ってます。それよりも、好きな人からもっと好かれる会社を目指す。そのためにはむしろ個性を尖らせていくべきで、それを嫌う人がいたって構わない。

安田

そうですよね。私もそう思うんです。ただね、こういう話をすると「そんな夢物語はやめろ」という人が出てくるんですよ。「そんなこと言っても、売上がなきゃ喰えないだろう」って。


西崎

ああ、私もよく「綺麗事ばかり言うのはやめろ」と怒られます(笑)。日本の経営者はそういうマインドの人の方が多いと思いますよ。

安田

う~ん、私からすると、「誰にとってもいい会社」を目指すことのほうが、よっぽど綺麗事に思えるんですけどね。実際私はそれで会社を潰してしまったわけで。


西崎

とはいえ実際、このSNS時代に「いいこと」ばかりPRしても意味はないと思いますね。たとえば求人広告でも、会社の魅力ばかりズラズラ書いていても「ほんとか?」と思われてしまう。給与や待遇では結局大手に敵わないのだし、他のアプローチを考えた方がいい。

安田

わかります。それで言うと西崎さんのところは、辞めた方の情報なんかも出しているでしょう? あれすごくいいなと私は思っていて。


西崎

ありがとうございます。実は私、いわゆる「退職エントリ」の文化が好きじゃないんですよ。退職する人が、会社の公式ブログに「とてもいい会社でした。すごく成長できました」みたいなことを書くやつです。「いや、いい会社なら辞めるなよ」と思ってしまう(笑)。

安田

笑。辞めるんだから、多少は嫌なことがあったんだろう、というね。


西崎

そうなんですよ。ああいうのを見ると、「多分本当に書きたいことは書けなかったんだろうな」と思ってしまう。なのでウチの場合は何が嫌で辞めるのかを赤裸々に語ってもらおうと。

安田

いいですね。実は私もワイキューブ時代に、辞めた社員だけ10人くらい集めて入社案内を作ったことがあります。


西崎

めちゃくちゃおもしろいです(笑)。

安田

社内の人間にはまったく理解されませんでしたけど(笑)。でも学生さんには評判良かったです。今で言えば、Amazon★1のレビューばかりが集まっているようなものなので。


西崎

ああ、確かに★5のレビューより参考になりますもんね(笑)。

安田

ええ。で、「この人はここが嫌だったのか。でも自分なら大丈夫そうだな」と思える人は応募してくれる。今の時代、求人もこういうスタンスが求められていると思うんですよ。まぁ、トゥモローゲートさんは採用にまったく困ってないと思うんですけど。


西崎

いやいや、全然そんなことないんです。SNSとかだと何か「欠点がない会社」みたいに見られがちなんですが、まだまだ全然未熟な会社ですし、欠点もたくさんあります。

安田

でも西崎さんはそれを隠さないでしょう? 実際その欠点をYouTubeとかで晒している(笑)。人間ってのは欠点を語られれば語られるほど、むしろその人を信頼してしまう生き物なんです(笑)。そして西崎さんはきっと、それをわかってやっている。


西崎

仰るとおりです(笑)。ズルいですよね。

安田

いやいや、だからこそ「プロ」なんだと思います。ちゃんと計算した上で出している。そこが強みなんですよ。


西崎

ありがとうございます。実際、すべて経営判断でやってますからね。

安田

そりゃそうでしょうね。「いいこと」を言うより「嫌なこと」を言う方が反響が出る。その結果売上もアップし、いい人材の採用にも繋がる。先日はシェフを雇ったりしてましたけど、あれもそういう文脈でしょう?


西崎

ご指摘のとおりです(笑)。皆さんからは「シェフの料理をタダで食べさせてあげるなんて、なんて社員思いの社長だ」なんて言われてますが、むしろ逆だと思ってます。

安田

ものすごく冷静に、打算的にやっている。


西崎

ええ。ですからこの対談では、むしろそういう私の「真のブラックさ」を暴いてほしいなと思っています(笑)。

安田

いいですね。対談タイトルも「黒い秘密会議」ですから、ガンガン黒い話をしていきましょう(笑)。

 

対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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