第42回 残業は、好きじゃない。

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第42回 残業は、好きじゃない。

安田

前回は中辻さんの「結婚観」についてお聞きしましたが、今回は「仕事観」についてお聞ききしようかと思っています。


中辻

はい、お願いします!

安田

最近の若い人は、仕事をするときに「自分のスキルアップのため」とか「給料分だけはちゃんと仕事する」とか、割り切って働いている人が多いんだそうです。


中辻

へぇ、そうなんですね。でもそれは別に悪いことじゃないと思いますけどね。

安田

ええ、同感です。ただ極端な例だと、バイトの昼休憩時間に店長が話しかけてきても返事しない人もいるらしくて。


中辻

え、なんでですか?!

安田

休憩中は給料が出ていないから、店長の話を聞く義理はない、ということみたいです(笑)。


中辻

えー、本当ですか、それ?!(笑) それってもう、人格的に大丈夫なんかな?(笑)

安田

笑。まあそこまで極端なことはしないにしても、朝礼とかで社長が長々と話をしている時に「僕らは給料もらってるからとりあえず聞いていますけどね。給料出ないなら、こんなありがたいかどうかわからない話、聞きませんよ」って言うのも、わからなくはないですよね。


中辻

あー、確かにそうですね。

安田

とはいえ、ある程度割り切って働くのは私も悪いことではないと思っています。ただ一方で、若いうちはとにかく愛社精神をもって、会社のためにハードワークすれば、結果的に自分自身のためになるんだ、という考え方もありますよね。それについて、中辻さんはどう思われますか?


中辻

うーん…これはもう、人それぞれなんじゃないですかねぇ(笑)。ちなみに私は、プライベートを充実させるために仕事をしていますけど。

安田

以前にも、娘さんを犠牲にするような働き方はしたくないって仰っていましたね。


中辻

そうですそうです。だから私自身はハードワークがあまり好きではないし、ウチの会社の部下にもそれは強要していません。というか会社のために頑張ってくれるのはもちろん嬉しいですけど、度が過ぎるとそのうちどこかでしんどくなってしまうはずなので。

安田

そうやって聞いていると、中辻さんは、最近の若者に近い感覚をお持ちなのかもしれませんね。


中辻

そうかもしれないですね。というか私、前にもお話したと思うんですけど、残業って好きじゃなくて。だって8時間以上も働いたら、パフォーマンスはどんどん落ちますよ? それなのに賃金は1.25倍払われるって、そんなのおかしいなと。

安田

仰る通りですね。でも経営者の中には「1日8時間しか働かないようなやつは仕事ができるようにはならない。寝る時間を削ってでも仕事してきた人だけが稼げるようになるんだ」って言うような人も多いんですよ。


中辻

えー。そんなことはないと私は思いますけど(笑)。

安田

中辻さんならそう仰ると思いました(笑)。


中辻

笑。もちろん「若い時は仕事の量がモノを言う」みたいなことを主張されている社長さんがいるのも知っています。でも仕事や稼ぐために必要な能力って、業務時間内で一緒に培っていってあげられたらいいんじゃないのかなって思うんですよね。

安田

素晴らしいですね。というか、私も会社員時代からほとんど残業したことないんですが(笑)。そもそも残業している人たちを見たときに、1分1秒惜しんで働いているのかっていうとそうでもなくて。結構ダラダラやってません?


中辻

そうなんですよ! 誤解を恐れずに言いますけど、深残業しているような人でめちゃめちゃ仕事できる人を、私はほとんど見たことがありません!(笑)

安田

同感です(笑)。残業なんかしないで涼しい顔して仕事している人のほうがよっぽど要領よく仕事をこなしていますよね。


中辻

わかります(笑)。

安田

ダラダラ残業なんてしてないで、1日8時間という限られた時間内でどうやって仕事のクオリティを上げるのかを考えたほうが、よっぽど成長できますよ。


中辻

本当にそうだと思います。というか、そもそもウチの会社ってほとんど残業が発生しないんですけど、それは残業しなくても十分に間に合うようなスケジュールを組んでいるからなんです。そしてそれこそが私たち経営者の仕事だと思っていて。

安田

なるほど。若い子たちだって仕事を通じてスキルアップしたい気持ちはあるはずだけど、20代の全てを犠牲にしてまではやりたくない。だからこそ、会社にいる時間内でいかにスキルアップさせるか。それこそが経営者の役割なんでしょうね。


中辻

そう! まさにそれを言いたかったんです(笑)。

安田

良かったです(笑)。


中辻

もちろん、将来は会社の中枢になりたいから20代はプライベートなんて考えずにバリバリ働く、という考え方も悪いわけではない。でも、私はそうはなりたくないし、部下にもそうはなって欲しくないから、そうならないように努力をしているんです。

安田

「全部を犠牲にして会社のために尽くさないと一生貧乏なままだぞ」なんてことはないと?


中辻
ないですないです。少なくともウチの会社の子たちは、残業せずともそれなりに収入を得て、それなりに幸せにやれているはずですから。
安田
となると、やっぱり、最近の若者の「就業時間内だけ仕事を頑張る」という割り切った考え方は、全然問題ないというわけですね。

中辻

はい。ただその代わり、就業時間中は、残業で出す力の200%を出して仕事してもらいたいとは思います。

安田
なるほど。ちなみに、冒頭の話の中で出てきた「休憩時間に店長を無視する」っていうのは、ダメですか?(笑)

中辻

それはもう人間的に良くないです! コミュニケーションはちゃんと取ってください(笑)。というか店長に限らず、一緒に働く同僚たちとうまくやることで、自分自身もお仕事しやすくなりますからね。

安田
なるほど。じゃあ休憩時間も、ある意味「仕事の一環」として、そこはうまく立ち回ったほうがいいよ、というアドバイスですね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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