第47回 一等地のデザイナーズマンションから、築40年の古マンションへ

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第47回 一等地のデザイナーズマンションから、築40年の古マンションへ

安田

突然ですけど、西崎さんが起業したときって、貯金ってどれくらいありました?


西崎

貯金ですか。いや、うーん、10万円くらいかな(笑)。

安田

10万円!? でもそれじゃ会社なんてできないでしょう。


西崎

まぁ作るだけなら50万円くらいあればできますんで。

安田

作るだけならできても、継続して運営してくのは無理じゃないですか。それに、その50万円もなかったわけでしょう? どう工面したんですか。


西崎

そのときは両親に頭を下げて150万円借りましたね。それをそのまま資本金にしてスタートして。

安田

へぇ、そうだったんですね。でも借りたと言っても、起業したてなんて売上もほとんど立たないわけで、150万なんてすぐになくなっちゃいませんでした?


西崎

そうですね。まぁでも、できるだけ節約しようと、築40年のマンションに引っ越して、そこを自宅件オフィスにして。それで何とかやってましたね。

安田

引っ越した、ということは、サラリーマン時代はもっといいところに住んでたんですか?


西崎

そうなんですよ。家賃18万円くらいのいいマンションに住んでたんです。東京だと普通かもしれませんが、大阪だとその金額だと結構すごいところに住めるんですよ。中心地のデザイナーズマンションみたいな。

安田

へえ~、一人暮らしでそれってことですよね。すごいなぁ。いやでも、その時には既にいつか起業するって決めてたわけでしょう? そんないいとこ住まずに、安いとこにしてコツコツ貯金してればよかったのに(笑)。


西崎

そう言われると返す言葉もないのですが(笑)。でも僕、追い込まれないと頑張れないタイプなんですよ。だからサラリーマン時代も、給与が上がったらどんどんいい部屋に引っ越してました。

安田

高い家賃に追い込まれないと頑張れないと(笑)。なるほど、そういうことで借金して起業されたわけですね。売上はどのくらいで立ったんです?


西崎

1社は最初からあったんです。前の会社が「1社はクライアント持っていっていいよ」って言ってくれて。でも逆に言えばその1社しかないまま1年目が終わっていくという。

安田

うーむ、確かに最初はなかなか大変ですよね。ちなみに1年目の売上としてはどれくらい?


西崎

450万円とかだったかなぁ。でも2年目で800万円くらいになって、そこからは右肩上がりという感じで。

安田

へえ、1年目と2年目で何か変えたんですか?


西崎

ええ。実は事業自体をガラッと変えたんです。1年目はいわゆる「就活支援事業」をやってたんです。つまり学生さんが顧客で、「面接はこう話すといいよ」「エントリーシートはこう書くんだよ」みたいなサービスです。当時は採用が冷え込んでいたんで、ニーズがあるだろうと。

安田

うーん、そりゃニーズはあるでしょうけど、学生さん相手だと、売上は立たないでしょう。そもそもあんまりお金を持ってないわけだから。


西崎

そうなんです。今考えればわかるんですが、当時はそれがわからなかったんですね。それで2年目にtoCからtoBに大きく鞍替えして。

安田

なるほどなるほど。それで採用支援をやるようになったと。


西崎

あ、いや、最初は営業代行とかやってましたね。お客さんの代わりにアポ取って営業してクロージングして、受注したら成功報酬みたいな。それで売上が倍くらいになって。

安田

へぇ、なるほど。それ1人でやってたんですか。


西崎

ええ、一人で。自分の得意分野を活かせるし、お客さんも喜んでくれるし、何より売上が立ったってことで嬉しかったんですけどね。ただ、正直に言ってあんまりワクワクしなかったんですよ。

安田

ああ、なるほど。まぁ言ってしまえば「売るだけ」ですもんね。


西崎

そうなんです。商品自体を良くすることにも関われないし、販売した後にお客さんがどうなったかもわからない。この仕事をずっと続けることはできないなと思って、これも1年でやめまして。そこから採用ブランディングに行ったって感じですね。

安田

へぇ、つまり今の事業は3つ目ってことなんですね。なかなか苦労されているわけだ。


西崎

まぁ、それなりに紆余曲折ありましたね。起業当時は「30年の事業計画書」とか作って、1年後2年後には大金持ちになっている予定だったんですけど(笑)。

安田

なんと(笑)。つまりまったく思い通りにはいかなかったわけですね。ちなみにその30年計画書では、2024年にはどうなっている予定だったんですか?


西崎

ハッキリとは覚えてませんが、社員数は1万人を超えてたんじゃないかな(笑)。

安田

なるほど(笑)。まぁ人生なんてね、そんな計画通りにはいきませんよね。


西崎

仰るとおりで。だから僕、超長期の経営計画とか作るのはやめようと決めまして。今は長くても5年スパンくらいでしか考えませんね。

安田

なるほどなぁ。まぁ、ともあれ親に借金して始めた会社が、今はこうやって有名になって成功しているわけですから。最初の頃にした苦労のあれこれも、ちゃんと肥やしになっているってことですよ。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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