第55回 コミュニケーション能力の3つのレベル

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第55回 コミュニケーション能力の3つのレベル

安田

今日はいわゆるコミュニケーション能力についてお聞きしたいんですけど。ビジネスシーンでもよく使う言葉ではありますが、ここには3段階のレベルがあると思っているんです。


西崎

3段階ですか。それはどのような?

安田

たとえば上司が部下に何かを指示しますよね。レベル1というのは「上司の言っていることを理解できる」。レベル2は「理解した上で実行できる」。そしてレベル3は「言われていないことまで考えて提案・実行ができる」。そんな風に考えているんです。まずこの分け方についてどう思います?


西崎

いやまさに仰るとおりだと思いますよ。

安田

ですよね。そして一昔前までは、その中で言う「レベル2」が社会人としての最低ラインだったんですよ。つまり、相手の言っていることを理解できるのは大前提で、その上で実行できる人じゃないと評価されなかったわけです。


西崎

ああ、確かにそうかもしれませんね。僕らくらいまでの世代はむしろ、レベル3までいってないと給与は上がっていかなかったりして。

安田

そうなんですよ。ただね、最近はとにかく人手不足という事情もあって、レベル2でも評価されるようになっている。特に20代の若い子でレベル2なら、及第点どころか引く手あまたな状態なんですって。そこに賃上げの波も重なって、今じゃユニクロの新人年収が500万円の時代ですよ。


西崎

ああ、僕もニュースで見ました。平均年収で言うと1200万円に近づいているレベルだとか。すごいですよね。

安田

そういう時代なので、レベル3の人材なら簡単に年収1000万円を超えるようになると思うんですよ。いや、むしろレベル2でも年収1000万円overということになってくるかもしれない。


西崎

もしそうなったらすごいですね。今だと平均年収は400万円台なわけですから。

安田

まず大企業からそういう傾向が強くなっていくと思います。というのも、既にビジネスの仕組みはあるので、人数さえ集めることができれば、レベル2でもちゃんと利益が出ちゃうんですよね。


西崎

そうかもしれません。もっとも、ベンチャーとか中小企業には当てはまらない話にも感じますね。例えばトゥモローゲートに当てはめてみても、安田さんの仰る「レベル2の人材に年収1000万円」というのは、少なくとも現状ではあり得ないと思います。将来的に考えてもここ23年では難しいんじゃないかと。

安田

仰る通りで、大企業と中小・ベンチャーでは本来求める人材のレベルが違うんですよ。でも今までは中小・ベンチャーも、大手と同じレベル2の人を一生懸命確保しようとしていた。でもね、そもそも中小・ベンチャーが必要なのは「レベル3」なんですよ。だったらそこだけを狙えばいい。


西崎

ああ、なるほどなるほど。でもその分、年収はかなり高くないと採用できませんよね。

安田

もちろんそうです。個人的には年収1200万円くらいが目安になると思ってるんですがそう言われてどう思います? あり得ますかね。


西崎

そうだな…あり得るでしょうね。言われてないことまで考えて提案・実行できる人なら、その金額でも雇う価値があると思います。ただ、どうでしょうね。僕も採用の現場に長く関わっていて思いますが、人間って給与だけで仕事を選ぶわけじゃないので、その額を提示しても採用できるかどうか

安田

それはそうなんですが、かといってそのレベルにある人材が、「仕事が面白そうなので年収400万円でいいです」とは言わないと思うんですよ。やっぱりそこはある程度のラインがあって、最低でも1000万円、相場では1200万円くらいになってくるんじゃないかなという。


西崎

なるほど。でも経営者の視点で考えると、入社時点でその額を払うのはかなり勇気がいりますね(笑)。結果を出してくれたらその分給与に還元するよ、なら全然OKなんですけど。

安田

まぁ、経営者からしたらそうですよね(笑)。でももう「結果を出したら給与上げます」で応募がガンガン来る時代じゃないと思うんですよ。やっぱり青田買いというか、将来のポテンシャルまで計算して給与提示をしていかないと厳しいんじゃないかなぁ。


西崎

確かにその変化は肌で感じているところで(笑)。そういう意味でも、先ほど安田さんが仰ったレベル3人材に特化した採用というのはアリだと思います。僕たちみたいな規模の会社だと、優秀な人が1人増えるだけで売上がドンと上がったりしますからね。

安田

そうなんですよ。もっとも、レベル3人材が市場にどれだけいるのかって話でもある。ちなみに西崎さんの感覚だと何%くらいだと思います?


西崎

うーん、どうでしょうね。262の法則からいくと2割ってことですけど

安田

レベル12割。レベル26割、レベル32割ってことですね。うーん、私の実感からすると、レベル32割もいないと思いますよ。1割もいないんじゃないかな。実際23%くらいじゃないですか?


西崎

そんなに少ないですか。まぁありがたいことにトゥモローゲートに応募してくれれるのは優秀な方が多いので、そこまで少ない感覚はないですけど。それにね、コミュニケーション能力という意味でいうと、伝える側のレベルもあるわけじゃないですか。

安田

ああ、確かにね。上司がレベル1だと、いくら部下がレベル3でもうまくいかないかもしれませんし。そう考えると、これから採用する人だけじゃなく既存社員のレベルアップを、みたいな話にもなってくるんでしょうね。なかなか大変そうだ(笑)


西崎

笑。まぁ、時代に合わせてバージョンアップしていく必要があるんでしょうね。うちもレベル3の人材に応募してもらえるようもっと頑張っていきたいと思います!

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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