「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第55回 コミュニケーション能力の3つのレベル
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たとえば上司が部下に何かを指示しますよね。レベル1というのは「上司の言っていることを理解できる」。レベル2は「理解した上で実行できる」。そしてレベル3は「言われていないことまで考えて提案・実行ができる」。そんな風に考えているんです。まずこの分け方についてどう思います?
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ですよね。そして一昔前までは、その中で言う「レベル2」が社会人としての最低ラインだったんですよ。つまり、相手の言っていることを理解できるのは大前提で、その上で実行できる人じゃないと評価されなかったわけです。
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そうなんですよ。ただね、最近はとにかく人手不足という事情もあって、レベル2でも評価されるようになっている。特に20代の若い子でレベル2なら、及第点どころか引く手あまたな状態なんですって。そこに賃上げの波も重なって、今じゃユニクロの新人年収が500万円の時代ですよ。
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そうかもしれません。もっとも、ベンチャーとか中小企業には当てはまらない話にも感じますね。例えばトゥモローゲートに当てはめてみても、安田さんの仰る「レベル2の人材に年収1000万円」というのは、少なくとも現状ではあり得ないと思います。将来的に考えても…ここ2~3年では難しいんじゃないかと。
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仰る通りで、大企業と中小・ベンチャーでは本来求める人材のレベルが違うんですよ。でも今までは中小・ベンチャーも、大手と同じレベル2の人を一生懸命確保しようとしていた。でもね、そもそも中小・ベンチャーが必要なのは「レベル3」なんですよ。だったらそこだけを狙えばいい。
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そうだな…あり得るでしょうね。言われてないことまで考えて提案・実行できる人なら、その金額でも雇う価値があると思います。…ただ、どうでしょうね。僕も採用の現場に長く関わっていて思いますが、人間って給与だけで仕事を選ぶわけじゃないので、その額を提示しても採用できるかどうか…
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それはそうなんですが、かといってそのレベルにある人材が、「仕事が面白そうなので年収400万円でいいです」とは言わないと思うんですよ。やっぱりそこはある程度のラインがあって、最低でも1000万円、相場では1200万円くらいになってくるんじゃないかなという。
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まぁ、経営者からしたらそうですよね(笑)。でももう「結果を出したら給与上げます」で応募がガンガン来る時代じゃないと思うんですよ。やっぱり青田買いというか、将来のポテンシャルまで計算して給与提示をしていかないと厳しいんじゃないかなぁ。
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確かにその変化は肌で感じているところで(笑)。そういう意味でも、先ほど安田さんが仰ったレベル3人材に特化した採用というのはアリだと思います。僕たちみたいな規模の会社だと、優秀な人が1人増えるだけで売上がドンと上がったりしますからね。
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そんなに少ないですか…。まぁありがたいことにトゥモローゲートに応募してくれれるのは優秀な方が多いので、そこまで少ない感覚はないですけど。それにね、コミュニケーション能力という意味でいうと、伝える側のレベルもあるわけじゃないですか。
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ああ、確かにね。上司がレベル1だと、いくら部下がレベル3でもうまくいかないかもしれませんし。そう考えると、これから採用する人だけじゃなく既存社員のレベルアップを、みたいな話にもなってくるんでしょうね。なかなか大変そうだ(笑)
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。