第62回 すべての仕事をAIがやるようになった世界

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第62回 すべての仕事をAIがやるようになった世界

安田

先週のAIの話にも関わるんですが、今後はホワイトカラーの仕事が激減するって言われているじゃないですか。国の政策から企業の商品開発から、なんなら経営自体もAIが担うようになっていくと。要するに「判断」はAIに任せる世界になって、人間はどんどん「現場」に近づいていく。


西崎

ふーむ、なるほど。人間の関わる範囲が狭まっていくということですね。

安田

そうそう。ただね、じゃあサービス業にしろ介護にしろ、現場はどうかと見てみれば、省人化が進んでいるわけですよ。ロボットがどんどん導入されて、こっちはこっちで人間がいらなくなってくる。


西崎

確かに。ロボットに対する指示もAIがやってくれそうですしね。

安田

そうなったとき、人間の価値ってどうなるんだろうと考えるわけです。中には「いや、俺はロボットじゃなく人間に接客してほしいんだ」みたいな人もいて、ロボットより高い金額を払って人間の店員さんにお願いするかもしれないですけど。西崎さんはそのあたりどう思いますか?


西崎

そうだなぁ。個人的には、僕はなんでもAIの方が上手くなっちゃう気もしているんですよ。たとえば料理とかも、人間が作るより美味しいものをAIが作ってしまうんじゃないかって。そういう状況にもしなったとして、敢えて人間に仕事を頼むんだろうか、という風には思いますね。ましてAIに頼むより高い金額で。

安田

なるほど。でもね、例えばバーに行ったらやっぱり生身のバーテンダーさんにシャカシャカやってもらいたくないですか? 仮にできあがるカクテルの味がAIとまったく同じだったとしても。


西崎

確かに味がまったく同じなら、せっかくなんでコミュニケーションも一緒に楽しめる人間のほうがいいかな、とは思いますけれど。でも僕はカクテルも、最終的にはAIの方が上手になっちゃうんじゃないかと思っているので。

安田

ああ、そうかそうか。AIの方がクオリティが上がってしまったら、確かに人間に頼む理由がなくなってくる気もしますね。ただ現状としてはね、人件費はガンガン高騰しているわけじゃないですか。つまり人間の価値が上がっている。


西崎

そうですね。人手不足というのが前提にはあると思いますが、「こんなに高い給与は払い続けられない」ということで、省人化を進めている部分もあるでしょうね。デフレの時とはだいぶ状況が変わっているわけで。

安田

そうですね。そういう状況を西崎さんはどう見ているんです? このまま人件費は上がり続けるのか、どこかで大きな省人化・無人化の波が来て、人間の価値が暴落するのか。


西崎

それで言うと、無人化の波が先に来ると思いますね。もちろん業態によってその規模やタイミングは違うと思いますけれど。

安田

ほう、なるほど。まぁでも、先ほど西崎さんも仰っていたように、遅かれ早かれ何でもAIがやれるようになりそうですもんね。料理について言えば、機械だけで作ったほうがミスもないし、異物混入みたいなこともないわけで。


西崎

ああ、確かに。安全性という観点でもAIに軍配が上がると。

安田

そう考えると、農業とかもそうなのかもしれません。しかも人間がやるより価格は安いわけで。ユニクロとかの服も、人件費が上がることで値段は上がっているわけですが、すべて機械が作れるようになったら、10分の1くらいの値段で出せるようになるのかもしれない。


西崎

うーん、そうなってくると価値観もガラッと変わってきそうですよね。あらゆるものが安くなっていって、人間は「稼ぐ」という感覚を忘れてしまうのかも。

安田

確かに(笑)。もうお金を稼ぐ必要なんてなくなって、生まれたら死ぬまでただ楽しく生きていればいいと。


西崎

そうそう(笑)。ただ、そういう人生が果たして本当に楽しいのか? っていう話ではありますね。こうなると「幸福とは何か」っていう哲学的な領域に入ってきちゃいますけど。

安田

本当ですよね。働く必要がなくなった時、人間は何をするんでしょう。でも日本だと「食うために仕方なく働いている」って言う人も多いから、喜んで働かなくなるのかも。西崎さんはどうですか?


西崎

僕は働き続ける気がしますね。やっぱり仕事に対して生きがいを感じていると言うか、存在価値そのものという感じがしますから。

安田

そう仰ると思いました(笑)。私も同感で、誰かの役に立って喜んでもらうってシンプルに楽しいですもんね。そもそも仕事の起源ってそういうことだったんだと思うんですけど。


西崎

わかります。もし今「100億円あげます、その代わりもう一生仕事しちゃダメです」と言われても断ると思うんです。キレイごとでそう言っているわけじゃなくて、やっぱり僕は社会と関わっていないとダメになっちゃう気がするので。

安田

なるほど。ということは最近流行っている早期リタイア、FIREなんかにも興味はないわけですか。


西崎

まったく興味ないですね(笑)。たぶん一瞬で老け込んでしまうんじゃないかな。

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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