第68回 「雇わない経営」についてどう思いますか?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第68回 「雇わない経営」についてどう思いますか?

安田

今回は私が以前から推奨している、「雇わない経営」について聞きたくて。これ、よく「社員をクビにしろってことか」なんて誤解されるんですけど、そうじゃないんです。むしろ人材不足で人を集めようにももう無理じゃないか、っていう前提から始まっている。


西崎

確かに人材確保がどんどん難しくなってますからね。大企業でも難しいし、中小企業ではなおさらです。

安田

そうそう。今までは、いわゆる大手とか人気企業が採用しなかった人を集めて、なんとかやってこれた。でも今後はそういうレベルの人でも採用が難しくなっていくわけで。このあたり、西崎さんはどう思います?


西崎

そうですね。僕の考えでは、むしろトップレベルに優秀な層を取りに行く、という戦略がいいと思っていて。うちの会社も実際そういう採用活動をやってます。他が取りこぼした人ではなく、超大手企業が採るような人を採用しにいくというか。

安田

なるほど。でもそれは人気企業であるトゥモローゲートさんだから可能なことなんだと思いますよ。世の中の中小企業全体で見たときに、それが成り立つかというと、無理じゃないかなと。


西崎

いや、僕は「成り立つ」と考えてます。トゥモローゲートだからできるんじゃなくて、社長次第なんだと。逆に言えば、僕が今からどこかの中小企業の社長になっても、今より良い採用をする自信があります。

安田

ほう、それはどうやって?  普通の中小企業では、そもそも募集しても人が来ないし、来たとしても他社が取らないような人材ばかりです。なのに西崎さんが社長になった途端、急に採用がうまくいくわけですか。


西崎

あ、社長になった途端に、は無理です(笑)。まずは「いい会社」にすることからですね。広告や営業みたいな「外」じゃなく、「中身」にちゃんと投資をして、いい会社にしていくことが大前提。その結果、採用力が上がっていくという順番です。

安田

う~ん、仰る意味はわかりますが、それこそそれは西崎さんだからできることであって、一般的な中小企業の社長には荷が重いんじゃないかなぁ。


西崎

そうですかねぇ。僕にできることなんて、本気でやれば誰にでもできると思うんですけど。

安田

いやいや(笑)。むしろ私は「百人に一人、五百人に一人に選ばれる会社」を目指すのが現実的じゃないかと思っていて。そのために例えば、副業OK、週2勤務でもOK、みたいに条件を緩くしていったり。


西崎

なるほど、確かにそれもアリですね。ちなみにウチもまさにそういうことをやってます。週1勤務の正社員もいれば、9時~15時勤務の人もいますし、副業もOKです。

安田

は~、それを人気企業にやられちゃうと他は大変だ(笑)。でもそこまで緩めるなら、いっそもうフリーランスになってもらえばいい気もしますけど。


西崎

まあ確かに、本人がその方がいいと言うならアリですよね。雇用契約か業務委託かというよりも、それぞれの希望に合わせて制度設計をしていくのがいいと思っているので。

安田

ふ~む、それってもう「雇わない経営」じゃないですか?


西崎

そうかもしれませんね(笑)。でも、やっぱり「社員」という枠組みであることに、安心感や所属意識を持つ人もいて。そことのバランスを取っていく必要があると思ってます。

安田

そうですね。個人的には「選べること」が大事だと思うんです。会社の都合で「全員業務委託にします」ではなくて、個別対応でいい。それが「雇わない経営」だと私は考えています。


西崎

それはすごく共感します。働き方も今は多様化しているし、社員の立場を守りつつ、より良いつながり方ができればいいですよね。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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