第82回 「2週間毎日手紙を送り続けた」ってホント?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第82回 「2週間毎日手紙を送り続けた」ってホント?

安田

孫正義さんが学生のときに、マクドナルドの藤田田(ふじた・でん)さんを訪ねたという話、ご存知ですか? 新宿の高層ビルに直接訪ねていったらしいんですよ。


西崎

ああ、聞いたことがあります。

安田

当然、最初は会ってくれない。でも何度も何度も通って、56回断られて、最終的に藤田さんが根負けして会ってくれた。「今後伸びる事業を教えてほしい」と言ったら、「コンピューターを勉強しろ」と言われたと。


西崎

は~、それで今のソフトバンクがあるわけですか。すごいなぁ。

安田

例えば同じように西崎さんのところに、そういう学生が訪ねてきたとします。まだ18歳くらいで、大学卒業したら起業したいと思っていて、とにかく大成功したいと。そういう子が来て「今後伸びる事業を教えてください」と言われたら、なんて答えます?


西崎

いやあ、難しいですね。というのも僕は「何をやるか」ってあまり関係ないと思ってるんですよ。飲食にしろITにしろ不動産にしろ、「何を」やるかより「誰が」やるかが重要なんだろうなと。

安田

ふ~む、なるほど。じゃあ「その考え方から変えたほうがいいよ」とアドバイスするかもしれないわけですね。


西崎

そうですね。ちょっと厳しい言い方をすれば、「何かの業界に行ったら成功する」と思ってる時点で、もうダメなんだと思います。孫さんの時代ならまだしも、今のこの時代だと特に。

安田

確かに確かに。とはいえ何かアドバイスしてくれと。業界は教えてくれなくていいから、ビジネスをやる上で重要なことを教えてくれと言われたら?


西崎

う~ん、自分はどうだったんだろう? 僕の場合は「起業したい」という強烈な思いがまずあったんですよね。で、じゃあその最短距離は何かなと考えたときに、当時、起業家を多く輩出していたのがリクルートだった。でもリクルートの募集がなかったので、別の人材コンサル会社に入ったという経緯なんです。

安田

なるほど、そうだったんですね。ちなみにサイバーエージェントは検討しなかったんですか。


西崎

もちろんサイバーも見ましたよ。すごくいい会社だと思いましたし、当時すでに大きな規模の企業になっていた。一方で僕が入った企業はまだ人も少なくて、これから立ち上げていく感じで。でもだからこそ惹かれたんですよね。

安田

さっき「孫さんの時代と今は違う」って話が出ましたけど、西崎さんが起業した頃はどうでした? まだ孫さん的なアプローチをしていた時代ですか。


西崎

孫さんほどではないですが、会いたい社長にはしつこくアプローチしてましたねぇ(笑)。僕、手紙書いて営業してましたから。

安田

えっ、そうなんですか?


西崎

はい、しかも手書きで(笑)。当時は手紙で営業ってよくある手法ではあったんですが、ほとんどの人はワープロで書いてました。でも僕は手書きにこだわってましたね。

安田

へぇ~、ちょっと意外かもしれない(笑)。


西崎

ある関西で有名な経営者にどうしても会いたくて、でも普通にアプローチしても絶対に会ってもらえない。だから僕は「毎日手紙を書く」っていう方法をとったんです。2週間くらい、毎日手紙を送り続けました。「昨日も手紙を書いた西崎ですけど」みたいな感じで(笑)。

安田

すごい! 孫さんよりしつこいじゃないですか(笑)。それで結果どうなったんです?


西崎

秘書の方から連絡が来て、難波の本社ビルに行きました。それで会っていただけて。

安田

は~、素晴らしい話だなぁ。相手はちょっと怖かったかもしれないけど(笑)。


西崎

本当に、今の時代だったら警察に通報されていたかもしれない(笑)。でもね、逆だったらどうだろうって考えた結果の行動だったんですよ。電話がかかってきても絶対出ないし、飛び込みで来ても絶対会わないと思う。でも毎日手書きの手紙が来たら、「おもしろそうな奴だな」と自分なら思うだろうと。

安田

結果的に本当にそう思ってもらえたわけですもんね。ちなみにさっきの学生の話に戻りますが、「卒業してすぐに起業すべきか、一度就職すべきか」と聞かれたら、どっちを勧めますか?


西崎

うーん、別にどっちでもいいと思います。僕は学生時代、ビジネスの経験もサポートしてくれる経営者のつながりもなかったので、とりあえずは就職しましたけど。ただ、それらを補ってくれる環境やスキルがあるなら、早く起業しても全然問題ないんじゃないかな。そういえば安田さんも最初は就職したんですよね。

安田

ええ。リクルートで2年ほど働いてました。あれがなければ人材業はやってなくて、もしかしたら今頃ロケット飛ばしてたかもしれないですね(笑)。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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