第12回 購買のための3つの導線

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第12回 購買のための3つの導線

安田
今日は「売るための導線づくり」について聞いていきたいと思います。リアル店舗の場合だと、通りを歩いてる人が店に入る導線からまず考えるんですか?

倉橋

そうですね。たくさんあるお店の中から、自分のお店に来てもらうのが第一ステージです。

安田
で、店舗で買い物をしてもらうための導線が第二ステージだと。

倉橋
仰るとおりです。具体的な内容の前に一つ押さえておきたいのは、今は「実店舗でモノを買ってもらうのがすごく難しくなっている」ということです。最近は家にいながらスマホで買い物、というのが主流なので。
安田
ああ、なるほど。仮に外に出てきてくれても、リアルな店舗を探すときもスマホで探しますしね。とりあえず街を歩いてみていい感じの古着屋さんないかな、という探し方をする人ってもうほとんどいない。

倉橋
そうそう。スマホで「古着 地域」を入れて、あとは何かこだわりのキーワードで検索して、出てきた店に行くって感じですよね。
安田
そう考えると実店舗の導線のスタートはオンラインなんじゃないかって気もするんですけど。

倉橋
オンラインもとても大事だと思います。
安田

も、ということは、オンラインだけではないということですか?


倉橋
ええ。弊社のロードサイドの店舗でも、毎日4万台の車が目の前を通っているんです。そこから実際の来店につながる割合は決して高くはありませんが、その導線を外して考えることはできませんからね。
安田
それだけの人が通っていても、なかなかお店には来てもらえないものなんですね。昔は人通りの多いところに店出しておけば、ある程度は勝手に入ってくるっていうイメージでしたけど。

倉橋
いや、そんなことはないんです。昔も今もお客さんというのは、何かしらの得があると感じられない限り来てくれません。
安田
へぇ、そうなんですか。得というと例えばどういうものですか?

倉橋
何でもいいんです。品物が安く手に入るとか、楽しい体験ができるとか、その人が「得だな」と思うものなら何でも。
安田
ああ、そうか。「楽しそう」っていうのも得の中に入るわけですね。金銭的な損得だけじゃなくって、時間をかけるに値する価値みたいなものも含まれていると。

倉橋
仰るとおりです。「得がある=気持ちがプラスになる」と考えるとわかりやすいかもしれません。
安田
なるほど、わかりやすい。じゃあ発信するとしたら、「この店に来たら気持ちがプラスになるよ」と伝えるわけですか。

倉橋
そうですね。この店の何がお客さんにとって得なのかを、リアルでもオンラインでも発信することが大事ですね。例えば看板に書くとか、SNSで発信するとか。
安田
ああ、ロードサイドのお店は看板もすごく重要ですよね。それだけじゃなくSNSでも発信していると。

倉橋
そうですね。野立て看板やのぼりにも当然力を入れていますし、SNSでの告知も毎日やっています。あとはラジオとかTVコマーシャルとか、とにかく媒体をいろいろ使ってやってますね。まずは認知してもらわないといけないので。
安田
まずは認知を広めていって「万代って何?」と興味を持ってもらえたタイミングで、「こういう得がありますよ」と伝えるという順番ですか。

倉橋
そうですね。それでやっとお店に来てもらえるかどうか、という段階に来ます。冒頭話していた「売るための導線づくり」でいうと、店内を考える前にこれだけの導線があるわけです(笑)。
安田
なるほど(笑)。単に売り場のレイアウトだけの話じゃないと。

倉橋
そういうことです(笑)。で、もちろん「最終的にお金を落としてもらう」ための導線も一生懸命考えるわけですが、さらにもう1つすごく大事な導線があって。それが「リピートしてもらうための導線」です。
安田
ははぁ。リピートも導線の中に含まれるんですね。

倉橋

ええ。リピートってお客さんが得をしたと感じたから発生するわけです。つまり1度目の来店で得をしたと感じてもらえなかったら終わりなんですよ。だから初回のお客さんにも最初から最後まで得をすることを体験してもらって、「この店はとにかく得がある」という経験をしてもらう。ここまでできれば商売はうまくいくと思います。

安田
なるほどなぁ。でも逆に言うと、得なものがないと商売を始められないっていうことですよね。

倉橋
ええ。さらに言えば、提供する側が「これはお客さんの得になる!」と本気で信じてないと難しいでしょうね。単に商売として儲かりそうだから始める、というスタンスでは厳しいと思います。
安田
そういえば高級食パン店が一瞬で売れなくなりましたけど、あれは倉橋さんから見ると辿るべくして辿り着いた結末って感じなんですか。
倉橋
それこそリピートに対する導線が弱かったんでしょうね。お客さんは得だと思ったから最初はこぞって行ったんだと思うんです。だけどだんだん得だと思わなくなった。だから行かなくなった。また行きたい!と思わせるアプローチが足りなかったんじゃないかなと。
安田
ということは、リピートへの導線が作り込まれていれば結果は違っていた?

倉橋
そう思いますよ。リピートに対する導線が一番大事ですからね。
安田
確かに。仮に最初はなかなか集客できなかったとしても、買った人が少しずつでもリピートしてくれれば、トータルのお客さんは増えていくってことですもんね。奥が深いですね。
倉橋
本当にそう思います。僕はずっと「購買」に関する研究をやっているので。人生のテーマとも言えるくらい。
安田
なるほど。まさに「購買研究家」ですね(笑)。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に13店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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