第91回 「年収の下がった転職者」の方が定着率が高い理由

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第91回 「年収の下がった転職者」の方が定着率が高い理由

安田

先日転職者の動向について聞いて驚いたんですが、「前職より給料が上がった人」と「前職より給料が下がった人」だと、後者の人のほうが成長意欲が高いらしいんですよ。


西崎

ほう。それはあれですか、報酬を下げてでも転職した人の方が本気度が高い、みたいな話ですか。

安田

まさに仰るとおりで、給与を下げてでもその会社に入りたかった、その仕事がしたかったってことらしいです。結果すごく頑張るし、定着率も高いと。


西崎

なるほどなるほど。言われてみれば腑に落ちる話です。逆に言えば、給料アップだけを目的に転職した人は、もっと良い条件があればすぐに転職してしまいそうですもんね。

安田

そうなんです。ちなみにこのあたり、経営者として実感はあります?


西崎

めちゃくちゃありますね。というのも、うちで役員やマネージャーをしている社員は全員、給料を下げて入社してきていますから。給料は下がっちゃうけど、この会社なら面白いことができると思って飛び込んできてくれたんです。

安田

ああ、なるほどなるほど。結果的にトゥモローゲートさんは大成功して、皆さん報酬的にも前職を超えているんでしょうし、素晴らしいモデルケースです。ともあれ、最近は大手企業がガンガン初任給を上げているじゃないですか。そうなるとやっぱり給与の高いところに優秀な人材が集まる気もしませんか。


西崎

そうですねぇ。働く人にとって給与ってすごく重要なので、ウチもできる限り上げていこうと思っています。ただ逆に「給与さえ高ければ意欲や定着率も高まる」というわけでもないのが難しいところで。

安田

どうなんでしょうね。初任給40万円、みたいな企業も出てきている中、どうやっていい人材を採用していくのか。


西崎

それでいうと、「応募者に給与を決めさせる」って手法を試してみたいんですよね。「前職年収の150%」みたいに、自分で希望を出してもらう。

安田

ほう! そんなことして大丈夫なんですか。


西崎

これの肝は「1年目の年収」であることです。希望額の年収で1年働いてもらって、その成果を踏まえて2年目以降はうちの査定で決める。

安田

なるほど! 確かにそれならアリかもしれない。話題にもなるでしょうし、PR効果も高そうです。


西崎

まさにそこも狙いで、紹介会社に払っていた費用をそっちに回すイメージですよね。

安田

いや~、おもしろいことを考えますねえ(笑)。でも、いい人材が来る可能性もある一方で、年収アップだけを目的に来る人も集まりそうですけど。


西崎

仰る通りですが、僕らは面接を6回やるので、見極める自信はあります。一緒に働く時間を持てるインターン制度を活用する手もありますし。

安田

確かに確かに。挑戦してみる価値はありそうですね。ともあれそうなると「年収が下がる転職をした人の方がやる気も定着率も高い」って話は、やっぱりもう通用しなくなるんですかね。


西崎

そうですねぇ。あまりに金額下がる転職をする人は減るんじゃないでしょうか。下がるにしても、例えば「前職で1,200万円の人なら1,000万円以下では働かない」くらいの感覚かなと。

安田

なるほど。そのあたりの塩梅も時代によって変わるってことなのかもしれませんね。いや今日はなかなかリアルな話ができました。ありがとうございます。

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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