この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
悲しみを見つめ直して、亡くなった人や自分の生きる意味に気づき、人生とは何かを捉えなおす
「門間さんと絵が、タウン誌の特集に載っている!」と、Eちゃんはある日、嬉しそうにMさんに電話してきたそうです。
Mさんは、そのころ地方にいたので、妹のEちゃんは、電話で知らせたのでした。
「Eちゃんは、その頃病気が重くなっていて、外にはあまり出られなくなっていました。だから、記事を通じて門間さんに出会えてよかった。あの子は門間さんが好きだったから」
振り返ると‥‥、確かにその頃、個展会場にEちゃんが訪ねて来なくなっていました。でも、Eちゃんに限らず、働き盛りで忙しい時は、何年も会わずにいることは珍しくありません。だから、Eちゃんともそのうちまた会えるだろうと思い込んでいました。しかし、Eちゃんは、その電話後、程なくして亡くなっていたのです。
Mさんが、絵を依頼するために訪ねてきたことで、初めて知る事実。それに、ただただ、驚くばかりでした。生前のEちゃんと、記事を介して最後に出会えていた‥‥、そして、数年後、Mさんが、「追憶する絵を描いてほしい」と訪れた。この巡り合わせにただただ、祈りを捧げました。
そうして始まったオーダーですが、Mさんは最初、想いが深すぎて、2時間話しても何もイメージできませんでした。でも、何かイメージを掴みたい‥‥、というMさんの気持ちがひしひしと伝わってきました。そこでビジョンクリエイターとして、今までの言葉の数々を思い浮かべたら、フッとイメージが表れました。
「浮かんだものをお伝えしてもいいですか?」と、確認すると、ぜひに、と身を乗り出すMさん。
そこで、紙に、構想を描き出しました。Eちゃんの一生を時間軸で表すイメージです。すると、さっきまで曇っていたMさんの顔が、一瞬で輝きました。
「すごい!こんな風に表現できるなんて。ぜひ、これで進めたいです」と、絵の方向が決まりました。
その後、構想を発展させる期間に、Mさんは、家族や、Eちゃんの元同僚と話しました。Eちゃんの好きだった本を読んだりして追体験していきました。そうして「Eちゃんは、こういう子だったのだ」と、たくさんの再確認、再発見していったのです。
そうやって数ヶ月を過ごし、最後にMさんがたどりついたのは、「Eちゃんはシンプルが好きだった」というキーワードでした。これは、大きな発見でした。なぜならば、途中、Eちゃんにまつわる言葉を絵に入れるかどうかずっと迷っていたからです。
言葉はいらない。抽象的なイメージだけがふさわしい。「シンプルが好きだったから、Eちゃんだけを抽象的に描いてもらえばいいのだ」と、Mさんは、腑に落ちたのです。
この深い想いを受けて、画家として構想を練り上げていきました。シンプルなものが好きで、内に深い想いを秘めたEちゃん。その魂を表すように‥‥何ヶ月も時間をかけて、絵の具を重ねて、シンプルな象徴を創り上げました。
画面の中央の光で、誕生を表しました。真ん中から外へと螺旋(らせん)を描いて、生まれて天に還るまでを表す構図です。子供服や幼稚園などでよく目にするパステルトーンで子供時代を表し、だんだんと大人の女性の服やアクセサリーに多用されるマゼンダやパープルへと変化するグラデーションを通じて、年齢の移り変わりを表しました。
そして、魂が心地良く世界に還っていくかのように、画面の外に螺旋(らせん)を上らせました。また、絵のどこに注目するかで、印象が揺れ動くような感触を大切に表現しました。
完成した絵を飾ったMさんは、
「Eちゃんの絵が日々変化して見えるのに、ときめいています。時々で、中心、外側、全体が揺れ動いて見えたりするのです。母と食事しながら、『こう見える』『いやいや、こうだってば』とEちゃんの絵の会話を楽しんでいます」と、目を輝かせました。
生命感を持っている作品を、毎日、味わっているのが伝わってきました。
そしてある日、メールが届きました。
「3回忌の時、絵を飾りました。集まった親戚から、『あの子の雰囲気が出ている』と言われて、語り合うことができました」
人は誰でも夫や妻、子供、両親、兄弟姉妹など、大事な人を失うことに直面します。これは、時に、「闇深くに陥って出られないのではないか」と感じるような悲しさです。でも、感情にふたをせずに、十分に悲しめばいいのです。時に人や場の助けを借りながら、一つ一つ紐解いていけば、悲しみはだんだんと癒されていきます。
また、それは生き方までも変えうるエネルギーをも秘めています。悲しみを見つめ直すことは、亡くなった人の生きた意味や自分の生きる意味に気づき、「人生とはなんだろう」と意義を捉えなおすことにもつながるのです。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。