原因はいつも後付け 第38回 「オンライン飲み会が教えてくれたこと」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第38回》オンライン飲み会が教えてくれたこと

実は私、コロナの影響でオンラインの会議が注目され始めた頃、恥ずかしながらこんな事を思っていました。
「まぁ、リアルで外食する重要性はオンラインには置き換えられないでしょ」って。

オンラインが便利になったとは言っても、所詮はモニター越しの会話。
リアルで大切な友人と乾杯をする醍醐味はオンラインじゃ味わえない。

だから自粛さえ終われば、またお客さんは戻ってくる。そう思っていた訳です。
でも、いざオンラインでモニター越しに人と話してみたら困った事になってしまいました。

モニター越しの会話が想像以上に便利なのです。
つまりこれは、私が考えていたリアル店舗の優位性が危うくなっている事に他なりません。

私たち店舗オーナーは、このオンラインの普及をどのように捉えるべきなのでしょうか?


「わざわざ外で飲むより、家で飲んだほうが安く酔えるじゃん。」

飲食店でお酒を飲むより、自分でお酒を買って飲んだほうが安上がり。
これは誰もが以前から薄々気づいていたことでしょう。

でも、コロナによる自粛がきっかけとなりオンラインが普及した事で、この薄々の気づきを多くの人が実感してしまいました。わざわざお店まで移動して、高いお金を払って飲食するよりも、家からオンラインで友達と繋がりながら飲食した方が、時間もお金も節約できる。

こうして、オンライン飲み会の普及が始まってしまった訳です。

このオンライン飲み会の急速な普及は、私たち飲食店にとって脅威となるのでしょうか?
確かに何の手も打たないのであれば、脅威以外の何物でもないでしょう。

ただ、この急速な環境の変化は、私たち店舗オーナーに「ある事」を考え直すきっかけを与えてくれているようにも思えるのです。

その「ある事」とは、お店の「本当の商品は何なのか?」という事。

もし自分のお店の商品が、単に酔うためのお酒や空腹を満たすためだけの食事だと考えているのであれば、そのお店の存在価値は今後下がっていく一方でしょう。

だってお客さんは、自分の家で安くその欲求を満たせることを知ってしまったから。

だから、私たち店舗オーナーは、これを機に改めて考えてみた方が良いのではないかと思うのです。

「家ではお金を払っても買えないものは何なのか?」
「家で飲むより高いのに、自分のお店に来たくなる理由は何なのか?」

この問いに対してオーナーそれぞれが考えて出した答え。
それこそが、実はお店の「本当の商品」なのではないでしょうか?

オンラインで会話するという流れは今後加速していく一方でしょう。
であるならば、私たちがやるべきはオンラインの便利さから目を背けて否定することではなく、オンラインでは提供できないお店の「本当の商品」の価値を考え、その価値を高める努力を継続すること。

自分のお店の「本当の商品」は何なのか?
これを考えるきっかけなんて、今までそんなになかったかも知れません。

ただ、これを機に改めてお店の本当の商品を見直し、その価値を高めていくことで、私たちは今まで以上にお客さんに価値ある時間を提供できる存在になれるのではないかと思います。

オンライン飲み会が教えてくれたこと。
それは、私たち店舗オーナーが今まで以上に魅力的なお店を作るために欠かせない「本当の商品」に対する考え方のヒントなのかも知れません。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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