第204回 繁盛しているお店にあるもの

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、あるオーナーさんと話をしている時に、こんな話を聞きました。

「コロナの自粛期間中にアルバイトスタッフのほとんどが辞めて、新しいスタッフに入れ替わった。昔の雰囲気を知っているスタッフがいなくなったので、お客さんとの接客の距離感も変わってしまい苦労している」とのこと。

コロナ以前から繁盛していたお店なので、直近で大きな問題とはなってはいないようでしたが、お店全体のバランスが崩れつつある状況を心配されている様子でした。

この話を聞いて改めて思ったのです。
「繁盛店というのは、やはり絶妙なバランスで成り立っているんだな」と。


私たちは商売をする時に、つい「儲かる方法を知りたい」と考えてしまいがちです。
もちろん商売をする以上は儲けを出さなければ続けるのが難しくなりますので、儲けようと考えること自体を否定するつもりはありません。

ただ私が思う、この「儲かる方法を知りたい」という思考の問題というのは、何か一つの答えさえ見つけることが出来れば自分も儲けられると考えてしまっている可能性が高いということであり、繁盛店は何か一つの答えではなく、様々な要因がバランスをとって繁盛という結果を作り出している以上、こうした考えで商売をしている限り、繁盛するお店は作れないのではないか、ということ。

私が仕事を一緒にしてきた印象では、冒頭に挙げたオーナーさんのお店は何か一つの要因だけが集客に繋がっているとは思いません。これは私のお店も同じであり、何か斬新な商品がある訳でもないですし、奇をてらった内装や接客をしている訳でもありません。

じゃあ、何が繁盛するお店とそうでないお店を分けているのかと考えると、その答えこそが「そのお店ならではのバランス」であり、このバランスの重要性に気づけるかどうかが、商売の成否を決める一因になっているのではないかと思うのです。

そう考えれば、私たちが商売を繁盛させようと思った時にやるべきなのは、どこかに自分の商売を一発逆転させてくれるような答えがあると期待するのを止め、地道ではあるものの仮説と検証を繰り返しながら、少しずつでも自分のお店ならではのバランスを見つけていくことではないでしょうか。

そして、自分で試行錯誤した結果にたどり着いたバランスだからこそ、そこが他店との違いになり、その違いこそが自分のお店にお客さんが行きたくなる理由にもなるのだと私は思います。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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