原因はいつも後付け 第43回 「競合が気になって仕方がない」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第43回》競合が気になって仕方がない

私が初めてお店を出店した時、生ビールを地域の最安値に決めました。
理由はもちろん、「競合よりも安ければ集客できる」と思ったから。

ただ、結果はこの連載でも何度か書いてきた通り、惨敗に終わりました。
「安くするだけで売れると思うなんて、どんだけお気楽な奴なんだ」と言いたくなる気持ちは分かります、笑。

が、今回私が話したいのは、安売りの話じゃないのです。
何を話したいのかと言うと、安売りを考えてしまう原因となった「競合」の話なのです。

なぜかと言うと、どうも商売が上手くいってるお店のオーナーほど、競合の存在を気にしていないみたいだからなのです。


繁盛しているお店は競合を気にしない。
こんな事を言うと、こんな反論をしたくなる人もいるかも知れません。

「そりゃ繁盛していれば、周りのお店なんて気にする必要ないでしょ」と。
つまり、お店が繁盛した結果として、競合を気にする必要がなくなったのではないかということ。

確かにそう感じられるのも無理はないかも知れません。
ただ、繁盛店を開業当初からお手伝いしてきた私の実感だと、どうもそうではないのです。

繁盛店のオーナーは、お店が繁盛したから競合を気にしなくなったのではなく、お店が繁盛する前から競合を気にしていなかったのです。もう少し正確に言うのなら、競合を気にしないようにしていた訳ではなく、そもそも競合の存在自体に興味がなかったのです。

恥ずかしながら、敢えて比較をするのであれば、これは開業前から競合の価格ばかりを気にしていた当時の私とは真逆の考え方といえる訳です。そして、もし当時の私がこの話を聞いたら、きっとこんな事を言ってきたと思います。

「競合を意識しないで商売なんてできるのか?」と。

今から振り返って考えてみると、開業時の私の思考には常に競合の存在がありました。
「あそこのチェーンより、うちのカクテルの方が本格的だ。」
「うちの生ビールは、他のバーよりも安くて美味しい。」

つまり、他と比較することで自分のお店の優位性を見出そうとしていた訳です。
ではなぜ、繁盛店のオーナーは私と違って競合を意識することなく、お店を繁盛させることが出来ているのか?

答えはとてもシンプル。
それは「自分のお店に集中している」から。

自分のお店に集中しているから、競合の存在が気にならないし、興味もないのです。
これは逆を返せば、競合ばかりを気にしていた開業時の私は、自分のお店に集中していなかったという事になります。

私のお店が繁盛しなかったという結果を招いていた原因の1つ。
それは、競合ばかりを気にして、自分のお店に集中していなかったから。

自分のお店に集中していないお店が繁盛する訳がない、というのは簡単です。
でも「自分は競合を全く気にしていない」と断言するのは、意外と難しいのではないでしょうか?

事業を始める時、オーナーなら誰しも実現したい夢や表現したい理想のお店があったと思います。
にも関わらず、いざ事業を始めてみると競合の動きに気を取られ、最悪の場合は競合と競うために、本来やりたかったサービスすら削り始めてしまうなんて事だってあり得る訳です。

つまり、競合を意識するという事は、本来自分が事業で表現したかった事から遠ざかってしまう事態を招きやすく、競合に意識を取られないようにするためには、自らの意識をやるべき事に集中するしかないのだと言うこと。

競合が気になって仕方がない。

私も過去に経験している以上、決して偉そうに言うことは出来ませんが、競合を気にしている以上は自分の強みに集中する事は難しく、強みを伸ばすことに集中していないお店が商売を軌道に乗せることなんて出来ないのだと、繁盛店のオーナーを見ていると思うのです。

2002年に開業した1号店カウンター席。競合ばかりに気を取られていた当時はいつもガラガラでした、笑。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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