第95回 会社員時代の自分に言いたいこと

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「自分なら起業しても上手くいく。」
前職で3年ほど営業を経験した頃、私はこう考えていました。

その根拠は何だったのかと今から振り返って考えてみると、それは営業で売れていたからだと思います。

「商品を売る能力さえ身につければ、商売は上手くいく。」
そう信じて起業した訳ですが、当時の私はまだ自分が「ある勘違い」をしていることに気づいていませんでした。


私が気づいていなかった勘違い。
それは、「会社が作った仕組みで売る力」と「自分で売る仕組みを考える力」は全く別だったということ。

私が営業として売ることができていたのは、会社が用意してくれた「売るための仕組み」があったからであり、これは逆に言うなら、私は仕組みがなければ売ることができない人間だったと言えます。

もちろん商売をすぐに軌道に載せられるような方はこんな失敗はしないと思います。
ただ、こうした失敗をしてしまうのは、何も私だけではないような気がするのです。

会社員時代は活躍していたにも関わらず、自分で商売を始めてみたら上手くいかない。
店長として繁盛店を任されていたものの、いざ自分でお店を開業したら新しいモデルが作れない。

こうした事が起きるのは、やはり私と同じように「仕組みの中で売る力」を自分の商売センスと勘違いしてしまっているからではないでしょうか?

商売を始めてから「売る仕組みを考える力」を身につけるのは大きなリスクです。
なぜなら仕組みができるまでは自分のお金と時間を投資し続ける必要があり、最悪の場合は仕組みが出来上がる前にお金が尽きてしまう可能性だってある訳ですから。

だからこそ私は会社員時代の自分に言いたいのです。
「会社に所属しているうちに、売る仕組みを色々試してみなよ」と。

商売を始めてみて気づいたのは、会社員とは自分のお金を使わずに新しいことを試せる恵まれた環境だったということ。そして何かを試して上手くいけば、それは自分にとっての経験になるだけでなく、会社にとっても儲けが増えるwin-winの取り組みだということ。

会社員時代、私は目先の給料を増やすことばかりに気を取られていました。
もちろん給料を増やそうと努力したことが間違っていたとは思いません。

ただ、自分のお金を増やすのは起業をした後に出来たとしても、自分のお金を使わず、かつ給料をもらいながら新しい事を試せるのは会社員時代しかありません。

そう考えるのであれば、会社員時代にしかできない利点を使わずにお金を増やすことばかりに力を注いでしまうのは、あまりに勿体ない気がしてならないのです。

 

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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