第107回 お客さんにリピートしてもらえません

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

さて、今回のお悩み相談のゲストは開業して半年を迎えた辻本くん。
元々営業職出身という経験を武器に、お客さんと積極的に会話をし、親しくなることでリピート率を上げようと考えているものの、成果はさっぱりの様子。

営業職の頃はセールストークに多少の自信があったようですが、その経験が使い物にならないようです。

そんな状況を見て、今の辻本が感じる事とは何なのでしょうか?


商売を一から始めた時、多くの人が顧客と呼べるお客さんがほとんどいない状況からのスタートになると思います。そんな状況でお店に来てくれる新規のお客さんはとても貴重で、何とかリピートしてもらいたいと考えるのは当然のことだと思います。

では、なぜ辻本くんは、リピートしてもらいたい一心で営業職時代に身に着けたトークを使ってお客さんと親しくなろうと努力したにも関わらずリピートされなかったのか?

今の私が考えるその答え。
それは、力を注ぐ場所を間違えていたから。

当時の私が力を注ぐべきだったのは「お客さんと親しくなる努力」ではなく、「お店の本当の商品価値を感じてもらう努力」。

私がバーを開業しようと思った理由の一つは、大手居酒屋チェーンにはない、色々なお酒を気軽に体験できることで得られる時間の価値を提供したいと考えたからであり、それこそが当時の私の「本当の商品」だったと言えます。

そう考えるのであれば、当時の私がやるべきだったのは、お客さんと親しくなってリピートしてもらおうとすることではなく、お客さんがより色々なお酒を試してみたくなる店内環境や店内ツールの見直しであったと思うのです。

事実、そんな取り組みを続けた結果、私のお店はリピートしてくれるお客さんも増えていき、繁盛するお店になることができました。

商品の価値が伝わり、その商品に魅力を感じるからリピートしたくなるということ。
言葉に出せば、ごく当たり前のように感じるかも知れません。

ただ実際は当時の私と同じく、自分の商品や、その商品の魅力を伝えるツールの見直しをすることなく、目の前のお客さんに対してその場しのぎの接客や営業だけでリピートを増やそうと考えてしまっている人は意外と多いのではないでしょうか。

私が営業職でセールストークを使って売れたのは、決してトークが良かったからではなく、私が売っていた商品を会社が改善し続けてくれていたから。

商売を続けるために欠かせない「商品」と「集客」。

商品の改善ばかりをしていても、集客できなければ売れることはありませんが、小手先の集客テクニックばかりに気を取られ、商品の定期的な改善をしない商売もまた、売れることはないんじゃないかと、懸命にお客さんと親しくなろうと努力している辻本くんに伝えたいのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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