本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
私は週末よく、子供のスポーツの試合に付き添います。
毎週異なる対戦相手を見るたびに、「色んなチームがあるもんだなぁ」と妙な関心を覚える訳ですが、そんな色々なチームとの試合をたくさん見てきた中で、ある時ふと興味深い共通点に気づいたのです。
それが「強いチームほどコーチが試合中に怒っていない」という事なのです。
強いチームほどコーチが怒らない。
これは逆に言うなら、なかなか勝てないチームほど試合中にコーチが選手に対して怒鳴っているという事です。
こんな事を書くと「そりゃチームが強いんだったら、コーチが怒る必要もないだろう」と思われる方もいるかも知れません。確かにその通りだと私も思います。
ただ一方では、こうも思うのです。
「怒る必要のない仕組みを作っているからこそ、チームが強いのではないか」と。
私なりに見てきた強いチームの特徴は、コーチが怒らないだけに限りません。
他にも「選手がイキイキ試合をしている」、「選手同士で指示を出し合っている」、そして何より「所属している選手の数が多い」といった特徴があるように感じるのです。
これは私なりの考えではありますが、強いチームのコーチは試合で選手を怒ることでチームを強くしようとするのではなく、他のチームの選手たちも加入したいと思える「仕組み作り」を第一に考え、選手が多く集まるようになった結果、そこから選手それぞれが切磋琢磨する環境が生まれ、チームが強くなっているように思えます。
確かに私が学生時代にスポーツをやっていた頃は、選手を怒ったり罰を与えたりすることは当たり前でした。だからこそ、なかなか勝てないチームのコーチは自分が経験してきた事を今の選手たちにも伝えるべく、同じ指導をしているのかも知れません。
ただ、昔と今で圧倒的に違うのは、選手が得られる他チームに関する情報量の多さであり、選手はより良い環境でスポーツができるチームに移籍しやすくなっているということ。
だから選手を威圧して自分の思い通りに動かそうとするほど、選手は他のチームへ移籍するという選択をし、選手が減ってしまった結果、切磋琢磨も生まれなくなり、チームが弱くなってしまうのではないでしょうか。
そして、これは商売にも同じことが言えるのではないかと思うのです。
私たちはつい、お客さんの方ばかりを見て自分の商売を考えてしまいがちです。
でも、自分が商売をするためにはお客さん以外にも取引先や一緒に働くスタッフの存在を欠かすことはできず、こうした協力してくれる人たちがいるからこそ、お客さんによりよいサービスが提供できるのであり、スポーツのチーム同様、何よりも「人が集まりたくなる、協力したくなる環境を作ること」こそが、強い商売を作るのではないでしょうか。
逆に考えるなら「発注してやっている」、「雇用してやっている」といった視点から周りに威圧的な態度を取るほど、協力してくれる人は集まらなくなり、結果的に弱い商売となってしまうということ。
スポーツであれ、商売であれ、これからは今まで以上に「人が集まりたくなる仕組み」を作ったチームやお店が強くなる時代なのだろうと、子供の試合を見ていて改めて気付かされたのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/