第210回 新たな取り組みを始めるその前に

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「自分の商売をより良いものにするためには、何をするべきか?」
このお題について考えたことのないオーナーはいないと思います。

そこで色々と考えてみた結果、私たちは自分の商売に何かしらの新しい取り組みを加えていくことになります。

でも、そんな新しい取り組みを考えては始めてみてを繰り返しているにも関わらず、目の前の現状を見ると以前と何も変わっていない。こんな経験があるのは、私だけではないはず。

じゃあなぜ、新しい取り組みを始めたはずなのに、なかなか現状が変わらないのか?

もちろん、取り組んだ内容自体が間違っていた可能性もあるとは思います。
ただ、自身の経験を振り返ってみると、何を始めるかという内容を決めるよりも前に、考えておかなければいけない事があったと思うのです。


新しい取り組みを始める前に考えること。
それは「元に戻らない仕組み」だと、今の私は思っています。

新しい取り組みを考えることには多くの時間を注ぐ一方で、その決めた取り組みを継続できる仕組みや工夫については、ほとんど考えていない。創業からしばらく私の商売に変化が起きなかったのは、これが原因の一つだったと感じます。

何かを始めても一回試しただけで止めてしまったり、何日間かは続けていたものの変化を感じる前に元の仕事のルーチンに戻ってしまったり。

これは取り組もうと決めた内容が正しいかどうか以前に、続けたくなる仕組みが不足していた訳であり、当時の私は気づいていませんでしたが、商売になかなか変化が起きないのは、こうした変化を感じられるよりも前に、思考や行動が無意識のうちに「元に戻ってしまう」ことが原因となっている場合は意外と多いような気がするのです。

筋肉の維持にはトレーニングの継続が欠かせないのと同様に、新しい思考や行動も無意識のうちに元に戻ってしまわないよう、継続する仕組みをあらかじめ考えておくことが必要だったということ。

どんなに斬新なアイデアが思い浮かんだとしても、それが継続できない取り組みであるならば自分の商売に変化を起こすのは難しく、逆に斬新さなどなくても無意識に元に戻ってしまわないような仕組みを用意し、その上に自分で決めた取り組みをコツコツと積み重ねていくことこそが、自分の商売に変化を起こす要因となるのだと私は思います。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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