デジタル課税の話を聞いてもいいですか?
はい大丈夫です。あまり詳しくないですけど。
利益が「出る・出ない」にかかわらず課税されると聞いたんですけど。何に対しての税金なんですか?
現行の会社法ルールだと、工場やオフィスの拠点を持ってないと税徴収できないんです。
そうなんですか。
はい。基本的には。
自宅で仕事するパターンだったら、どうなるんですか。
その場合は自宅がオフィスじゃないですか。
確かに。
たとえばアメリカのIT会社で、日本にホームページがあって、そこで商売やってるケースとか。
なるほど。そういう企業向けの課税ですか。
そうです。
オフィスを持たないノマド的なワーカーに向けた課税ではない?
違います。ノマドでも日本で商売をやってれば、必ずどこかに住所登記されます。
なるほど。登記があるかどうかってことですね。
そうです。日本に工場やオフィスがなくても、今は商売できちゃうじゃないですか。
ネット・ビジネスはそうですよね。
ネットでクレジットカード決済すれば、登記しなくても商売できる。税金が安い国に登記して安い税金を納めて終わりになる。
デジタル課税が導入されると、どうなるんですか。
まず法人税を最低15%にする。
どこで登記しても15%は税金がかかるよってことですね。
はい。
それは国同士の約束ってことですか。
そうです。
そこに加盟していない国に登記した場合は?
売上に対して一定の税金をかける。それが国際的なルールになってくると思います。
たとえばGoogleは日本には税金を払ってないんですか?
払ってないですね。
なんと!
Amazonはよく言われますよね。日本でかなり利益を上げてるけど、日本にほとんど税金を払ってない。
今後はAmazonやGoogleも売上に対して税金を払わないといけない?
そういう流れです。
Amazonで買い物をした時点で税金かかるとか。
それがデジタル課税ですね。
なるほど。
いずれにしても巨大IT企業が中心です。
じゃあ小さな会社は関係ない?
今のところ対象になってるのは数百社で、Netflixとかもそうですね。誰かが買った瞬間に税金をかけるという仕組み。ガソリン税みたいなもんです。
でもAmazonって日本に物流拠点がありますよね。
あります。なので今回対象になっているのは無形のサービス。たとえばAmazon MusicとかAmazon Primeとか。
なるほど。物が動かないサービスですね。Facebook広告は?
Facebookも対象になります。
日本で誰かが広告費を出したら課税される?
まだ明確に決まっていない部分もありますけど。基本的には売上に対して税金をかけていくルールです。
ネット企業が対象だからデジタル課税という名前なんですか。
そうでしょうね。ただ、どちらかといえば「もうけ過ぎてる会社に対して課税する」という概念だと思います。
「無国籍企業に対する課税」みたいなイメージですけど。
そこはたぶん国際的な法人税の統一でやると思う。それにプラスして課税するって感じですね。
今までは「儲けてるのに払ってなかった」ということですね。
これまでは利益に対する課税だったので。ざっくり言うと「売上から経費を引いたもの」に税金がかかってた。
経費を使いまくって払わずに済ませてきたと。
そうです。ほとんど払ってない。
実際すごい経費もかかるんでしょうけど。NetflixとかAmazonとか。最初はずっと赤字でしたし。
そうですね。でも巨大企業って再投資し続けるじゃないですか。それでどんどんでかくなっていく。
そんなイメージですね。
巨大なお金を動かしながら全部再投資に回す。それだと国にまったくお金が落ちていかない。
確かに。
なので大きくなった数百社に対して「もう、とんでもなく稼いでるんだから税金払え」ってことだと思う。
つまりデジタル課税はGAFAみたいな巨大企業に対する課税ってことですね。われわれ中小企業には関係ない。
関係ないです。
YouTuberが税金を払ってないとか、そういう話じゃないと。
そういう話じゃないです。
巨大企業の話なんですね。
巨大企業に歯止めをかけるということを、国家は考えてるんじゃないでしょうか。
全部投資に回されたら税金を取れなくなるから。
サブスクなので、後から利益上がることは分かってるし。絶対つぶれない構造で拡大し続けてるわけです。
利益を出さなくても株主は文句言わないんでしょうか。
利益を出さずに株価を上げて行けたらいいわけで。
なるほど。利益への課税には限界があるってことですね。
そういうことです。
ソフトバンクも1兆円赤字だしたから税金0円になって。ゼロはないだろうって気がします。
税金を取られまくってる会社員から見たら、かなり不公平です。
不公平すぎますよ。あんなにCMやってて税金ゼロだなんて。
社労士からすると、社会保険料を払ってるところだけは評価できます(笑)
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。