第201回 買い負けがもたらす未来

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第201回「買い負けがもたらす未来」


安田

中国で「日本のウイスキーバブル」が起こっているみたいです。

久野

ワインもバブルになってましたね。

安田

そうなんです。私ワイン好きなんですけど。中国の人が買い始めてから買えなくなっちゃいました。

久野

凄い値上がりなんでしょうね。

安田

『シャトー・ラトゥール』という、年代によって1本2〜3万円だったワインが、今は10万円以上します。

久野

5倍ですか。

安田

とにかくメチャクチャ高くなったイメージです。日本のウイスキーも大人気で、1本1億以上で売れるウイスキーがあるそうです。銀座のウイスキー博物館ってご存じですか?

久野

いえ。知らないです。

安田

日本のウイスキーがずらーっと何千本も並んでる店で。1本100万、200万っていうのはザラだそうです。

久野

凄いですね。

安田

日本のウイスキーを、もはや日本人が飲めない時代です(笑)日本でいいものつくっても海外に持っていかれちゃって。

久野

自国の商品でも買い負けてますね。中国の富裕層は日本の10倍ぐらいいますから。ほしいものはどんどん買っちゃいます。

安田

「山崎の12年」とかを100本単位で買うらしいです。そうすると、手に入らないので、どんどん高くなっていって。

久野

投資の意味もあるんでしょうね。

安田

日本製のウイスキーを買おうと思ったら、中国経由で倍くらい出さないと買えない。

久野

お金持ちの場合は、自分が買いにいくわけじゃなく買いにいかせているので。100本ぐらい仕入れて、自分が飲む分以外は誰かに売るんでしょうね。

安田

日本のタワマンや土地も、どんどん海外の人が買ってるそうです。とくに中国の人がたくさん買ってると言われてまして。

久野

日本人には高い物件が売れなくなってきてます。買うお金がないんだと思います。

安田

お金がないんですね、悲しい。日本人が角ハイボールを飲んでる横で、1本何十万のウイスキーを外国人は飲んでるわけですよ。

久野

それぐらいレベルが違ってきちゃってるんです。

安田

ちょっと想像つかないですけどね。日本産ウイスキーが1本1億円とか。

久野

世界三大ウイスキーと言われてるらしいですから。日本のウイスキーって。

安田

ウイスキーは樽に入れて何十年も寝かさないといけないので。増産しようと思ってもできないんです。買い占められたらもう造りようがない。

久野

投資対象としても優れているという判断なんでしょうね。

安田

商売上手ですよね。中国の人って。これって今だけの爆買い現象なのか、それともずっとこの傾向が続くのか。どう思いますか。

久野

対日本でいったら、爆買いされ続けるんじゃないんですか。

安田

そうですよね、やっぱり。

久野

もともと中国人は世界中のものを買いまくってるんです。マグロとか、牛タンとか、フカヒレとか。

安田

北海道の高級ウニも全部海外に持ってっちゃうらしいですね。昔は全部築地に持ってきてたのが、今は全部海外に行っちゃうそうで。

久野

もう日本はそういう国になっちゃったってことですよ。半導体や木材もないって言うんだけど、あれはぜんぶ中国に買い負けてるだけですから。

安田

実際にないわけではなく?

久野

日本のニュースではあたかも「世界的に物がない」って言ってるんだけど、そんなことは全くなくて。ぜんぶ中国に流れてるだけ。

安田

売る側としたら高く買ってくれるところにもっていきますよね。

久野

安売りばかりしてるところに、わざわざ持っていかないですよ。

安田

バブルの頃に日本人が買ってた腕時計とが、円安もあって日本ですごく安く買えるそうです。日本人もお金を持ってた時代が一瞬あったじゃないですか。

久野

ありましたね。

安田

日本には結構いい中古品が眠ってるらしいです。それを海外から来た人がどんどん買ってるそうで。円安なので外貨で買いたたかれちゃってる感じです。

久野

中古車もけっこう高く買い取ってくれるんだけど、みんな海外にもっていくんですよ。腕時計や宝飾品もそうです。その界隈だけはバブッてます。

安田

普通の日本人が海外旅行に行って、ブランド物を買う時代はもう終わりですね。

久野

この先もうないんじゃないですか。

安田

真逆になってるってことですよね。日本に行くと「安くていいもんがいっぱいあるから」みたいな。

久野

それが現実ですね。

安田

どうしたらいいんでしょう?

久野

いったん割り切って外貨を稼ぐしかないですよ。

安田

どこかで逆転現象は起こるんですか。

久野

外貨を稼いでどこかで仕掛けないと。ずっと変わらないでしょうね。

安田

高級な食材なんて、もう日本では食べられないということですね。

久野

インバウンド向けに一部は残るでしょうけど。

安田

日本にあっても日本人には食べられない。

久野

中国人に勝てるだけの購買力がないと、日本人がいいもの食べれる日はこないですよ。海外に売ったら2倍だって言われたら、やっぱり外に出しちゃう。

安田

そうですよね。お寿司屋さんで「もうウニ食べれないですよ」って言われました。

久野

ウニはめちゃくちゃ高くなってますね。

安田

ウニってケースで仕入れるんですけど。今まで1、2万だったウニが「20万」って言ってました。

久野

すごいですね。

安田

「もう買えない」って。

久野

いやー、それはつらいな。

安田

リーズナブルで美味しいお寿司屋さんなんですけど。

久野

やっていけないですよね。

安田

そうなんです。寿司屋なのにウニが買えないっていう。

久野

いずれ他の高級食材も買えなくなりますよ。

安田

かっぱ巻きしか食べられないとか(笑)おそろしい時代ですね。

久野

冗談ではなく、本当にそうなるかもしれないですよ。サンマもすごく値上がりしてたじゃないですか。

安田

確かに。今ウクライナの問題で給湯器も買えないって言われました。

久野

それも同じですよ。ないわけじゃなくて、日本に回ってこないんです。

安田

何かあったら最初に日本が切られてしまうと。

久野

別に切られているわけじゃないんです。ただ買い負けているだけ。もっと高く買えるようにならないと。

安田

そのためには高く売るしかないんですよね。

久野

付加価値をつけて、とにかく高く売るための努力をする。働いている人にたくさん報酬を払う。それ以外に方法はないと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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