第247回 ジャニーズが変える会社のカタチ

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第247回「ジャニーズが変える会社のカタチ」


安田

ジャニーズがSMILE-UPになって、タレントさんは別の会社に移ることになりました。

久野

そうみたいですね。

安田

SMILE-UPは被害者への保証会社にして保証が終わったら廃業すると。新しい会社を立ち上げて、タレントさんたちはそちらと契約する。という形みたいです。

久野

人によってはお金の流れが変わるってことですよね。

安田

はい。プロダクションが仕事を受けてタレントに払うのではなく、タレントさんに直接お金が入り、そこからマネジメント料を会社に払う、という流れ。

久野

クライアントとのやりとりもタレントさんがやることになりますね。

安田

そこに困惑している人も多いみたいです。

久野

自分でやったことがないでしょうから、大変だと思います。

安田

でもこれってすごく先進的なやり方だと思うんです。つまり会社員だったタレントさんを起業・独立させてしまうってことですよね。

久野

そういうことになりますね。

安田

私は会社員も「自分の会社持つべきだ」という考えで。会社が給料払うのではなく、個人が稼いできた中から会社に使用料を納める。これが理想の形だと思っていまして。

久野

私がすごく画期的だと思ったのは「若い子は雇用する可能性もある」と言っていたことですね。

安田

自分で仕事を取れない人や、まだ稼げない人を雇用するってことですよね。ちゃんと独立できるまで育成しますよと。

久野

はい。すごく先進的な取り組みなんじゃないですか。

安田

先進的ですけど資金的に大丈夫なんでしょうか。

久野

新しい会社のブランド力をどこまで磨けるかでしょう。ものすごくスターが集まる会社になるか、それとも食えない人が集まる会社になるか。

安田

今まではジャニーズの名前で売ってきたわけで。これからは1人1人のブランドで売っていかないといけない。

久野

そうですね。そして売れたタレントが辞めていかないように、「ここに居続けた方がいいよね」というブランド力も付けつつ、エージェント会社を経営していかなきゃいけない。

安田

タレントと会社の関係性が変わりますよね。今までは社員だった人が、これからはクライアントになっていく。稼げるタレントに切られたら終わっちゃうので。

久野

タレントさんにとってすごく居心地のいいエージェント会社にならないと。

安田

ジャニーズと違って裏方に徹する仕事になるでしょうね。

久野

そうですね。今まではジャニーズ事務所とテレビ局がくっついている構造ですから。今後はタレントがテレビと直接くっつく構造で。

安田

今どんどん有力なタレントさんが抜けていってますよね。

久野

普通にやったらどんどん力がなくなっていく。義理とかじゃなく、どうやってここを立て直していくのか。本当に優秀な経営者じゃないと良いタレントを繋ぎ止められないです。

安田

東山さんも井ノ原さんも経営は未経験でしょうから。

久野

そうですね。適性があるのかっていうのがすごく試されてる。本当はプロ経営者を入れた方がいいんでしょうけど。

安田

ただマネジメント会社の経営に長けている人だと、タレントより会社の利益を考えますよね。

久野

確かに。新しい会社にはならないかもしれません。

安田

タレントの立場から見て「ここに所属していたい」という会社にしないといけない。

久野

そうですよね。

安田

自分でマネージャーを雇っても、その人の教育したり、指示出しはしなくちゃいけないわけで。それを代行してくれる。有能なマネージャーをシェアして使えるとか。

久野

それが本来のエージェント会社ですけどね。

安田

ただ若手タレントの育成が絡んでくるとややこしい。そこにお金がかかりますから。全員が成功するわけじゃないし。成功しなかった人のコストは誰が払うの?って話になる。

久野

ダメな人がしがみつく可能性もあります。

安田

ありますよね。

久野

いかに売れる人材だけを見極めて、売れるように育てていくのか。そこの真価が問われると思います。

安田

そもそも素材の発掘と教育機能がジャニーズの1番の売りでしたからね。

久野

これから育てた人材も「自由に辞めていいよ」となると成り立たないでしょうね。

安田

資金的に難しいですよ。FAじゃないですけど「最低10年は事務所のために利益を落としてね」っていう契約にしないと。

久野

もし、それがうまくいくなら、美容室とかも全部エージェント会社みたいになっていくかもしれません。人不足の会社のカタチが大きく変わっていくかも。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから