第288回 経営者が知っておくべき退職金

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第288回「経営者が知っておくべき退職金」


久野

安田さん、小規模企業共済やってないんですか?

安田

やってないです。そもそも知らないです。

久野

これは知っておいた方がいいですよ。「経営者の退職金」と呼ばれてるんですけど。

安田

ほう。

久野

月額7万円まで入れるんです。すると7万円×12か月で年間84万円。84万円分の所得税と住民税が確定申告で返ってくる。

安田

それは役員報酬の中から払うんですか?

久野

そうです。簡単に言えば無税で積み立てできる仕組みですね。安田さんも絶対にやった方がいいですよ。

安田

久野さんはやってるんですか?

久野

もちろんやってます。

安田

もっと早く教えてくださいよ(笑)この対談もう280回もやってるのに。

久野

すみません(笑)まさか知らないとは思いませんでした。ちなみにこれ、差し押さえ禁止財産になってるんですよ。だから破産しても残るんです。

安田

会社が潰れる前にやっておけばよかったです。

久野

そうなんですよ。

安田

ちなみにこれは何歳で現金化できるんですか?

久野

事業を辞めたタイミングですね。

安田

事業をやめたタイミング?じゃあ辞めるまでは現金化できない?

久野

貯まった金額を元手に借りることはできます。担保みたいな感じですね。

安田

なるほど。それが小規模企業共済ですか。知りませんでした。

久野

ひとり社長はもう必須というか。企業型DCと小規模共済は標準装備しておくべきだと思いますよ。

安田

これって社長しか入れないんですか。

久野

社長と経営者幹部が入れます。ただ、大きい会社になると入れなくなっちゃう。小規模企業じゃないとダメなんですよ。

安田

小規模の基準は何ですか。

久野

業種によって違うんですけど従業員の数で決まります。5人までとか。

安田

そうなんですね。どうやって申し込むんですか。

久野

銀行で申し込むのが早いですね。あとは直接、中小機構に申し込み用紙をもらって申請するか。マイナンバーでもできます。

安田

オンラインでもできるんですか?

久野

できます。今はめちゃくちゃ便利になりました。

安田

年間84万が無税になると大きいですね。

久野

はい。税金分は年末調整か確定申告で返ってきます。例えば年収1000万だと実効税率33%ぐらいじゃないですか。そうすると24〜5万返ってくる。

安田

毎年家族旅行に行けますね(笑)

久野

確定拠出年金と併用できるので両方やった方がいいですよ。

安田

ちなみに現金化する前に死んじゃった場合は遺族に行くんですか。

久野

そうですね。これは「みなし相続財産」なので奥さんに行きます。保険と同じ扱いになります。

安田

なるほど。じゃあ安心ですね。

久野

安田さんは何歳まで会社をやる予定なんですか?

安田

できれば死ぬまでやりたいです。今はひとり法人みたいなものなので社員にも迷惑をかけないし。仕事は大好きなので。

久野

だったらやはり併用がいいです。70歳から確定拠出年金を受け取って、働きたいうちは働いて、辞めたくなったら小規模企業共済で退職金を受け取る。

安田

それはいいですね。辞める前に死んじゃっても奥さんが受け取れるし。

久野

そうなんですよ。

安田

早速申し込んでおきます!ありがとうございました。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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