第296回 受け取れない年金について

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第296回「受け取れない年金について」


安田

少子高齢化はどうにもならないところまで来てますよね。

久野

現実を受け止めなくちゃいけない時期に来ていると思います。

安田

そうなると絶対やらないといけないのが高齢者の医療費自己負担。いま75歳以上の人は1割負担ですよね。

久野

基本はそうですね。収入が多い人は2割ですけど。

安田

収入より資産だろうと言われていて。生活していけるなら自己負担して欲しいと。負担している若い子は資産もないし収入もない状態なので。

久野

そうですね。色々問題発言になるかもしれませんけど、僕は自己負担を増やした方がいいと思います。

安田

それ以外に方法がないような気がしますけど。

久野

国家資源をどこに注ぐかという問題で。若者に注いだ方がいいと思います。

安田

若者には未来がありますからね。

久野

生活に困ってる高齢者にはセーフティネットもあるわけじゃないですか。生活保護とか。

安田

本当に困っている人をサポートするのは賛成です。

久野

高齢でも余裕がある人は支える側に回らないと。もうもたないですね。

安田

未来のある若者にもっと手厚くしないといけない。

久野

そう思います。

安田

ただ親の面倒を見てるのは子供なので。高齢者の負担が増えると、そのお子さんたちの負担も増えちゃうみたいです。つまり若者は楽にならないんじゃないかと。

久野

なるほど。そこは考えたことがなかったです。

安田

今までは保険で親の面倒を見てもらえたけど、見てもらえなくなると子供がそれを負担するしかない。

久野

老後の資金は誰が稼ぐべきなのかっていう議論がありまして。「自分の金は自分で稼ぐ」っていうのが日本の基本方針になってるわけですよ。

安田

そうなんですか?意外ですね。

久野

いや、基本的にはそういう考え方なんですよ。たとえば認知症が進めば最終的には施設に入らなきゃいけない。だから自分でそのお金を残しておこうというのが介護保険で。

安田

なるほど。

久野

あくまでも自分で払うという前提でいろんな制度が組まれているわけです。子供が払う前提で組んでないし、必要なお金は自分たちで残しておくべきだという考えです。

安田

普通は自分で生きていけるように準備しますよね。それとも国が面倒を見てくれるのが当たり前と思ってるんですか。

久野

残念ながら多くの人がそう思ってますね。

安田

「まさか面倒見ないつもりじゃないだろうな」みたいな。

久野

そう。そこが大きく間違っていて。保険なので何か突発的なことがあれば国が面倒は見るんだけど、基本的には自分で準備するもの。あくまでセーフティーネットなので。

安田

みんながセーフティネットを使いまくったら破綻しますよね。

久野

ネットが破れちゃう。

安田

「基本的には自分たちで生きてください」「どうしようもない人だけ助けます」ってことですね。

久野

それがセーフティネットです。

安田

だけど国民にはまったく伝わってないと思いますよ。

久野

いつも言っているように厚生年金って厚生年金保険なんですよ。みんながこれで老後を生きていくための制度ではなく。

安田

久野さんにそう教えてもらって、いろんな人に聞いてみたんです。でも皆さん厚生年金は受け取れるものだと思ってますよ。

久野

そもそも保険だという前提が理解されてないんでしょうね。

安田

そもそも周知する気がないんじゃないんですか。受け取れないとなったらみんな払わなくなっちゃうので。

久野

なるほど。

安田

「2000万ぐらい蓄えといてね」って言っただけであんなに怒るんですから。

久野

「なんで怒るんだ?」って話なんですけど。

安田

そもそも2000万では生きていけないじゃないですか。基本的に体が動くうちは自分で稼いで生きてくれってことですよね。

久野

そうです。

安田

それを誰かがはっきり言わなきゃいけないですよ。

久野

よく考えたら僕も社労試験で初めてそれに気づいたかもしれません。誰かが言わないといけませんね。でも誰も言いたがらないだろうな。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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